眼配めくば)” の例文
お幾は氣がついたやうに四方あたりを見廻しました。先刻八五郎が、平次の眼配めくばせで、外へ飛んで出たことに氣がつかないほど緊張してゐた樣子です。
眼配めくばせして止める。そして、不審顔の巴剌帖木パラテムの手を引き、道行きのおかし味よろしく、下手へ引っ込む。舞台無人。
半七に眼配めくばせをされて、庄太はその唐紙を明けようとすると、建て付けが悪いのできしんでいる。力任せにこじ明けると、唐紙は溝をはずれてばたりと倒れた。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だがそのせわしい中にも、時々、新吉が背なかにかぶっているつづらのほうへ眼配めくばりを忘れていない。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思わせぶりな眼配めくばせをしていたが、なにをいうつもりだったのだろうというようなことをくよくよと思い返していたわけだったろうが、先方は相模一の有徳人の一ノ姫で
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
眼配めくばせをしたけれど、竹丸は何が何やら分らぬので、腕まで腫れて來た母の拳を見詰めてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぐびり/\と飮居たりしが今半四郎が胴卷どうまきより錢を出し酒飯のだいを勘定する處をじろりと見るに胴卷には彼のたのまれたる金子五十兩へびかへるのみし樣に成て有ければ雲助共眼配めくばせを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
フォン・リンデン伯爵夫人と、給仕に出ていた執事しつじとの間に素早い眼配めくばせが交された。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
吉岡へ静かにいて来る様眼配めくばせして傍らの松林へ這入って行ったんです。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
課長は気色のわるそうな顔をしたが、眼を転じて部下の一人へ眼配めくばせした。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
りつなぐさめつ一方かたへこゝろかせんとつと一方かたへ見張みはりをげんにしてほそひも一筋ひとすぢ小刀こがたな一挺いつてふたかれさせるなよるべつしてをつけよと氣配きくば眼配めくば大方おほかたならねば召使めしつかひのものこゝろかぜおと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女は島田髷の頭を重そうに垂れて、なにかの苦労ありげに悄然としているのが半七の注意をひいたので、彼は幸次郎に眼配めくばせしながら、小戻りして其のあとを追った。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平次は、時三郎からは、これ以上の手掛りを引出せないと思つたか、八五郎に眼配めくばせして、宜い加減のところで切上げ、加納屋の塀の内を、もう一と廻りして、フト足を止めました。
袖ひき、眼配めくばせして、一同は喬之助を取り囲んだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、逃げ口を探すような眼配めくばりして
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半七に眼配めくばせをされて、女房のお仙が出てみると、沓脱くつぬぎの土間に一通の封じ文が落ちていた。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平次に眼配めくばせされて、八五郎が飛んで出ると
半七に眼配めくばせされて、松吉は衝立越しに声をかけた。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)