町家ちやうか)” の例文
これはかねて私に帰依きえしてゐる或る町家ちやうかの一人娘が亡くなつたので、その親達から何かのしろにと言つて寄進して参つたから、娘の菩提ぼだいのためと思つて
やがて此報知しらせが上田の町家ちやうかから戸へ伝へられると、その夜の静かに燃える洋燈らんぷの下では、すべての人々がすべての理由を忘れて父の立派な行為を語り合つた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
平次と八五郎は、無駄を言ひ乍らも、白山の一角、詳しく言へば武家屋敷と寺と、少しばかり町家ちやうかはさまつて、坂なりに構へた白梅屋敷の金兵衞の家に入つて行きました。
もとは大坂の町家ちやうかの娘で芝居のかはり目には両親ふたおやが欠かさず道頓堀へれてく程であつたが
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
乗合は三人で、一人は国姓爺こくせんやの人形芝居からぬけ出して来たやうな、耳のあか取り、一人は廿七八の、眉をおとした町家ちやうかの女房、もう一人はそのともらしい、はなをたらした丁稚でつちだつた。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
町家ちやうか内儀ないぎらしい丸髷まるまげの女が七八なゝやつツになる娘の手を引いて門のなか這入はいつて行つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
こぼれるほどにつたきやく行商ぎやうしやう町人ちやうにんがへりの百姓ひやくしやう乳呑兒ちのみごかゝへた町家ちやうか女房にようばうをさなおとうといた町娘まちむすめなぞで、一かゝつたふねが、おほきな武士ぶしめに後戻あともどりさせられたのを
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
但馬守たじまのかみ與力よりきどもをおどかしけていて、それから町家ちやうかうへくばつた。すると其處そこには、あらゆる腐敗ふはいが、鼻持はなもちもならぬまでにどろ/\と、膿汁うみしるのやうな臭氣しうきを八ぱうながしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)