田舎娘いなかむすめ)” の例文
旧字:田舍娘
造麻呂 (信じられぬかのように)……なよたけを?……あんなふつつかな田舎娘いなかむすめを本当にもらって下さるとおっしゃるのですか?
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
馬車の下には、馬や御者などの間に交じって、小さな田舎娘いなかむすめが旅客に花を売っていた。「おみやげの花はいかが、」と彼女は呼んでいた。
それをさしてあるいた姿すがたは、まったく東京とうきょうおんなであって、どこにも、山奥やまおく田舎娘いなかむすめらしいところはえなかったのであります。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
「蘭子さん、あんた田舎娘いなかむすめになりませんか。いや、お手のもののメーク・アップでもって、ぽっと出の田舎娘に変装するんですよ。できるでしょう」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それと、もう一つは、この不可解な新しい老発意ろうぼちが、張りきった若盛りの田舎娘いなかむすめを一人携帯して来ていることです。
田舎娘いなかむすめ』(The Cottage Maid)は珍しいというだけのものだが、『真実なるジョニー』(Faithful Johnnie)は名盤の一つだ。
するとお松という十六になる田舎娘いなかむすめが私の室にはいって来ました。私は一と眼見てすぐに彼女の心を知りました。また叱られはずかしめられて私に訴えに来たのです。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
尾の石から菱野ひしのの湯までは十町ばかりで、毎日入湯に通うことも出来るという。菱野と聞いて、私は以前家へ子守に来ていた娘のことを思出した。あの田舎娘いなかむすめの村は菱野だから。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だが、はたの人にやきもきされて、それで何とかなるなど、田舎娘いなかむすめだとはいえ、新しい時代を生きようとしている修造たちの息吹いぶきにふれてきた茂緒にとっては、阿呆あほらしくて問題にならなかった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
おまけに、そのとき、あなたはぼくがってから、初めて厚目に、白粉おしろいをつけ、紅をっていた。その田舎娘いなかむすめみたいなお化粧けしょうが、なみだくずれたあなたほど、みじめに可哀想かわいそうにみえたものはありません。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
私が田舎娘いなかむすめであることを忘れていらっしゃいますのね。
女4 それに、今度の御相手は、なんでも、竹籠たけかご作りのお爺さんとかの娘で、それもまだ十七、八のとんだいやしい田舎娘いなかむすめなんですって!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
あやしげなふうをした、田舎娘いなかむすめが、みじか着物きものに、かさをかぶって、かごのようなものをかついでいましたが、そのときは、おんなはこちらをずに
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
江川蘭子の田舎娘いなかむすめは、奉公先の高梨家の一丁ほど手前で車を捨てると、用意の小さな風呂敷ふろしき包みを小脇こわきに、チョコチョコ同家の門前に近づいて行った。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どこから伝え聞いて来たか、包一つを抱えた田舎娘いなかむすめは、立ちどころに拾われて、もう水仕事をしている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
田舎娘いなかむすめというよりもむしろ町娘と言いたいくらいで、かわいらしかった。
……(声を低めて、静かに語り出す)実は、文麻呂様の心をまどわしたのは、年若ないやしい田舎娘いなかむすめなのでございます。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
田舎娘いなかむすめにしてはからだが少し白すぎやしないかしらと心配しながら、次々と細紐ほそひもを解いて行った。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くにからってきて、アトリエのかべにかけてあったマンドリンをって、十七、八のみすぼらしいふうをした田舎娘いなかむすめが、それをらしながら、自分じぶん製作せいさくした彫刻ちょうこくまえって
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
青年せいねんは、はっとしました。自分じぶんは、ゆめているのでないかと、おおきくをみはりました。かみのこわれた、みじか着物きものをきた田舎娘いなかむすめは、まぼろしでも、ゆめでもないように、はっきりとっていたのです。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)