爬虫類はちゅうるい)” の例文
数千万年前に、地球の上にすんでいたという巨大な爬虫類はちゅうるいである恐龍。頭の先から尻尾まで三十何メートルもあるというすごい恐龍。
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
八弥は、畸形きけい爬虫類はちゅうるいのように、ひじ、膝、肩までを地にりつけたまま、眼だけを相手の筒口つつぐちに向けて、ジリジリと前へ迫り出した。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの婆はまるで屍骸しがいの肉を食う爬虫類はちゅうるいのように這い寄りながら、お敏の胸の上へのしかかって、裸蝋燭の光が落ちる気味の悪い鏡の中を
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
数本の松明に照らされて、その木の葉がチラチラする。左右に並んでいる喬木の幹、これも松明に輝いて、爬虫類はちゅうるいのようにテラテラする。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
南米アマゾンの秘境、人界から遠く隔絶された「失われた世界」に、ジュラ紀時代から生き残っている巨大爬虫類はちゅうるいんでいる世界がある。
これほど優しい心の殿下を持ちながら、この伯爵に至っては人間のくず、冷血爬虫類はちゅうるいのごとき存在であった。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
あらゆる妖怪ようかいはその衣裳方となって彼を扮装ふんそうしてやったのである。はいつつ立っている。爬虫類はちゅうるいの二重の歩き方である。かくて彼はあらゆる役目に適するようになる。
ひどくせているでしょう? それこそ、骨と皮です。私の顔のようでないでしょう? 自分ながら少し、気味が悪い。爬虫類はちゅうるいの感じですね。自分でも、もう命が永くないと思っていました。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
それは爬虫類はちゅうるいの掌のようでもあれば、吹きつけた火の粉のようでもある。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まるで爬虫類はちゅうるいででもあるように、ヨタヨタと這い上っていることである。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
冬なのに蛇トカゲの爬虫類はちゅうるいがうようよ這いまわり、毒蛾どくが、サソリ、赤蟻あかあり、種類も知れぬ毒虫が群れをなして兵の眠りまで苦しめる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「恐龍は爬虫類はちゅうるいだろう。爬虫類といえばヘビやトカゲがそうだ。ヘビは人間をのむからね。したがって恐龍は人間を食うと思う」
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このジュラ紀の菜食性巨大爬虫類はちゅうるいを、コナン・ドイルは原始人類の家畜となし、象の皮膚のようなその皮の上に、粘土のマークをつけさせた。
(それは僕の習慣ではない、パリやベルリンに半生を送った彼の習慣に従ったのだった)が、彼の手は不思議にも爬虫類はちゅうるいの皮膚のように湿っていた。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
巨大な爬虫類はちゅうるいではないだろうか? 二抱ふたかかえほどもある老松が、土塀の前に背を延ばしていた。ワングリと盛り上がった幹の一所へ、焚火の光が届いていた。今にもウネウネ動き出しそうであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
爬虫類はちゅうるいの大家です。医学士と理学士との肩書をもっていますが、理学の方は近々学位論文を出すことになっているので、間もなく博士でしょう」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中村はため息をらしながら、爬虫類はちゅうるい標本室ひょうほんしつへ引返した。が、三重子はどこにも見えない。彼は何か気軽になり、目の前の大蜥蜴おおとかげに「失敬」をした。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もやが樹々のこずえにからんで氷の花になるという寒さなのに、見れば梅軒ののどくびは、爬虫類はちゅうるいの肌のように汗光あせびかりがして太い血管がさらにふくれている。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巨大爬虫類はちゅうるいのディノザウルスなどが、その怪異な姿を見せていた時代、即ちジュラ紀よりも、更に一億年近い太古において、既に地球上に出現していたものである。
あまりに着物を引張るので、その垢じみた単衣はべりべり裂け始め、その下から爬虫類はちゅうるいのようにねっとりした光沢こうたくのある真白なはだきだしになってきた。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いや、もうそのときは、試すなどの“ためらい”を持っている余裕はない。本来の彼そのものが、爬虫類はちゅうるいのようなはやさとずるさで彼女のおんなをぬすんでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大学生の中村なかむらうすい春のオヴァ・コオトの下に彼自身の体温を感じながら、仄暗ほのぐらい石の階段を博物館の二階へ登っていった。階段を登りつめた左にあるのは爬虫類はちゅうるい標本室ひょうほんしつである。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ウーム……」と、真ッ赤なものを吐く爬虫類はちゅうるいみたいに、手も足も縮め込んで、雨の中を、転がった。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまち鈍いウウーンという幅の広い響きが室内に起ったが、その音は大変力の無い音のようで居て、その癖に、永く聴いているとなにかこう腹の中に爬虫類はちゅうるいの動物が居て
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
爬虫類はちゅうるいの標本室はがらんとしている。そこへ、——時間はいくらもたたない。やっと三時十五分くらいだね、そこへ顔の青白い女学生が一人ひとりはいって来る。勿論もちろん看守も誰もいない。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうちに、この大軍列は、幾ツにっても生きている爬虫類はちゅうるいのような分裂を見せて三ツにわかれ、各自各方向へ、そのカマ首をさらに刻々と敵へせまらせていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜ月は、あのように薄気味のわるい青い光を出すのだろう、どう考えたって、あれは墓場から抜け出して来たような色だ。さもなければ、爬虫類はちゅうるいの卵のようにも思える。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし彼の青白いねっとりした皮膚や、怪しい光のある眼つきなどは別に消散する様子もなく、どっちかといえば更に一層ピチピチした爬虫類はちゅうるいになったような気がするほどであった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大道で香具師やし真似まねなどしていたが、もとは定遠の浪士のせがれで鎗の妙手。その骨ばッた青面あおづらとひょろ長い四肢は、呼延灼こえんしゃくが言ったように、いかにも爬虫類はちゅうるいの皮をよろうている一個の怪そのものだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)