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燭奴
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つけぎ
兼博勞が
顧みた
時女房等は
割つた
燭奴の
先を
突つ
掛けては
香煎を
口へ
含んで
面倒に
嘗めて
居たのであつた。
その八百屋の前を通った時、お君さんの視線は何かの
拍子に、葱の山の中に立っている、竹に
燭奴を挟んだ
札の上へ落ちた。札には
墨黒々と
下手な字で、「
一束四銭」と書いてある。
彼はそれでも
根よく
白い
瓦斯絲を
縱横に
畑の
上に
引つ
張つてひら/\と
燭奴を
吊つて
威して
見た。
「よし/\
癒つちやつた」
醫者は
手を
放つて、
太い
軟らか
相な
指の
腹で
暫く
揉むやうにしてそれから
藥を
塗つた
紙を一
杯に
貼つて
燭奴のやうな
薄い
木の
板を
當てゝぐるりと
繃帶を
施した。
球磨川の淺瀬をのぼる藁船は
燭奴の如き帆をみなあげて