熱湯にえゆ)” の例文
焼味噌のすこし黒焦くろこげに成つたやつを茶漬茶椀かなんかに入れて、そこへ熱湯にえゆ注込つぎこんで、二三杯もやつて見給へ。大抵の風邪はなほつてしまふよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それには先ず薬種屋からサフランを買ってその一もんめを器へ入れて上から熱湯にえゆいで暫く浸しておきますときいろい汁が出ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こっちあ、たかだか恩を売って、人情を買う奴だ、贅六店ぜいろくだなの爺番頭か、三河万歳の株主だと思うから、むてえ癪に障っても、熱湯にえゆは可哀相だと我慢をした。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで、王はみずから其の湯を覗きに行くと、男はすきをみてかの剣をぬき放し、まず王の首を熱湯にえゆのなかへ切り落した。つづいて我が首をねて、これも湯のなかへ落した。
それ外日いつぞや友人いうじんところで、或冬あるふゆさけみながらおそくまで話込はなしこんでゐたときこと恋愛談れんあいだんから女学生ぢよがくせい風評うはさはじまつて、其時そのとき細君さいくん一人ひとり同窓の友クラスメートに、散々さん/″\或学生あるがくせい苦労くらうをした揚句あげく熱湯にえゆのまされて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかし、山家が何程どれほど恐しい昔気質かたぎなもので、すこし毛色の変った他所者よそものと見れば頭から熱湯にえゆを浴せかけるということは、全く奥様も御存ごぞんじない。そこが奥様は都育みやこそだちです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
第十 油揚あぶらげ飯 は無造作むぞうさなもので、先ずお豆腐の油揚へ熱湯にえゆをかけて油気あぶらけを取ります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ひとまれたり、られたり、後足うしろあしすなをかけられたり、いぢめられてさいなまれて、熱湯にえゆませられて、すなあびせられて、むちうたれて、あさからばんまで泣通なきどほしで、咽喉のどがかれて、いて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私は鼻をすすりながら、焚落たきおとしの火を十能に取って炉へ運びましても、奥様は未だ御目覚が無い。熱湯にえゆで雑巾をしぼりまして、御二階を済ましても、まだ御起きなさらない。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『へえ、左様さうでしたか。』と大日向は鷹匠町の宿のことを言出して笑つた。『貴方も彼処あすこの家に泊つておいででしたか。いや、彼時はひど熱湯にえゆを浴せかけられましたよ。 ...
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
源は、いきなり、熱湯にえゆのような言葉を浴せかけました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)