浮足うきあし)” の例文
手下てした野武士のぶしは、敵の三倍四倍もあるけれど、こう浮足うきあしだってしまっては、どうするすべもなかった。かれはやけ半分のをいからして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と赤き小提灯さしかざし、浮足うきあししてソト近寄りたる。国麿のわきに、しのぶの何心なく来かかりしが
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れから家督相続と云えばれ相応のつとめがなくてはならぬ、藩中小士族こしぞく相応の勤を命ぜられて居る、けれども私の心と云うものは天外万里てんがいばんり、何もかも浮足うきあしになって一寸ちょいとも落付おちつかぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それ、そこで言って、ひょいひょい浮足うきあしで出てく処を、背後うしろから呼んで、一銚子を誂えた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そろつて浮足うきあしつて、瑪瑙めなうはしわたると、おくはうまた一堂いちだう其處そこはひると伽藍がらん高天井たかてんじやう素通すどほりにすゝんで、前庭ぜんていけると、ふたゝ其處そこ別亭べつていあり。噴水ふんすゐあり。突當つきあたりは、數寄すきこらしてたきまでかゝる。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
老爺ぢいしはぶきひとわざとして、雪枝ゆきえ背中せなかとん突出つきだす。これに押出おしだされたやうに、蹌踉よろめいて、鼓草たんぽゝすみれはなく、くも浮足うきあし、ふらふらとつたまゝで、双六すごろくまへかれ両手りやうていてひざまづいたのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
浮足うきあしで、そっと寄って、蒲団ふとんを上げて見ると何にもない。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)