やぶ)” の例文
ですからあの秋山図も、今は誰の家に蔵されているか、いや、いまだ亀玉きぎょくやぶれもないか、それさえ我々にはわかりません。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
依つてそのオホハツセの天皇の御陵をやぶろうとお思いになつて人を遣わしました時に、兄君のオケの命の申されますには
才学はあつたが、痘痕とうこんのためにかたちやぶられ、婦を獲ることが難かつた。それゆゑ忍んでおこなひなき梅をめとつたのださうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すなわち強てこれを紙に摺り付くれば、単にそのやぶれた外皮のカケラが暫時不規則に紙に貼り着くのみである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
又攘夷論者も、鎖国主義的攘夷論でなくて、国家の面目をきずつけ、国体の尊厳をやぶり、国民の意気を挫く脅迫的開国、城下の盟約開国に悲憤慷慨する尊皇愛国的な攘夷論者であつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
役目を大切に存ずる故にまことの盲人になり果てたりと申すこと、少しも言分いゝぶん立ちがたし、父母より受けたる身体髪膚はっぷみだりにやぶり傷つくるは古人の戒むるところであるのに、その方が行いは
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今年ことし三月さんぐわつなかばより、東京市中とうきやうしちうおだやかならず、天然痘てんねんとう流行りうかうにつき、其方此方そちこちから注意ちういをされて、身體髮膚しんたいはつぷこれを父母ふぼにうけたりあへそこなやぶらざるを、と父母ふぼおはさねども、……生命いのちしし
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
太祖これを見たまいて、なんじまことに純孝なり、たゞ子をうしないて孫を頼む老いたる我をもおもわぬことあらじ、とのたまいて、過哀に身をやぶらぬよう愛撫あいぶせられたりという。其の性質の美、推して知るべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
寛斎は生れて姿貌しぼうがあったが、痘を病んでかたちやぶられた。医学館に学び、また抽斎、枳園きえんの門下におった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
またその神詔りたまはく、「明日あすあした濱にいでますべし。易名なかへみやじり獻らむ」とのりたまふ。かれその旦濱にいでます時に、鼻やぶれたる入鹿魚いるか、既に一浦に依れり。
かれその大長谷の天皇の御陵をやぶらむと思ほして、人を遣す時に、その同母兄いろせ意祁おけの命奏してまをさく
依つて翌朝濱においでになつた時に、鼻のやぶれたイルカが或る浦に寄つておりました。そこで御子が神に申されますには、「わたくしに御食膳の魚を下さいました」と申さしめました。