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歸邸
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きてい
其お
答へ
承はらずば
歸邸いたし
難し
平にお
伺ひありたしと
押返せば、それ
程に
仰せらるゝを
包むも
甲斐なし、
誠のこと申
上ん
兎に
角思ひ
立たせ
給へとて、
紀の
守が
迷惑氣にも
見えず
誘ふにぞ、
夫好からんとて
夏のさし
入りより、
別室を
仮住に
三月ばかりの
日を
消しゝが、
歸邸の
今日の
今も
猶殘る
記臆のもの二ツ
是より
以後の
一生五十
年姫樣には
指もさすまじく、
况て
口外夢さら
致すまじけれど、
金ゆゑ
閉ぢる
口には
非ず、
此金ばかりはと
恐れげもなく、
突もどして
扨つくづくと
詫びけるが、
歸邸その
儘の
暇乞