歩行あゆむ)” の例文
その歩行あゆむや、この巡査には一定の法則ありて存するがごとく、おそからず、早からず、着々歩を進めてみちを行くに、身体からだはきっとして立ちて左右に寸毫すんごうも傾かず
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
當に歩行あゆむ事大凡一里許と思ふ頃燈火のひかりは見えず成けるにぞ彌々いよ/\途方にくれ斯ては詮方なし然ばとてかうしては居られず何にしても此道このみちを行ば人里へ出ぬと云事は有まじと心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
歳越としこしの日などはいづれの家にてもことさらに雪をほりまどのあかりをとり、ほりたる雪も年越としこしの事しげきにまぎれて取除とりのけをはらず、掘揚ほりあげ屋上やねにひとしき雪道歩行あゆむにたよりあしき所もあり。
折要歩せつえうほは、そつ拔足ぬきあしするがごとく、歩行あゆむわざなやむをふ、ざつ癪持しやくもち姿すがたなり。齲齒笑うしせうおもはせぶりにて、微笑ほゝゑときつね齲齒むしばいたみに弱々よわ/\打顰うちひそいろまじへたるをふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
歩行あゆむがごとくなれば主はきも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つぐ遠寺ゑんじかねガウ/\とひゞき渡りいと凄然ものすごく思はるればさしも強氣がうきの者共も小氣味こきみ惡々わる/\足にまかせて歩行あゆむうちあをき火の光り見えければあれこそ燒場やきば火影ひかげならんと掃部は先に立て行程にはや隱亡小屋をんばうごや近接ちかづく折柄をりから道の此方こなたなる小笹をざさかぶりし石塔せきたふかげより一刀ひらりと引拔稻妻いなづまの如く掃部が向うずね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)