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あゆむ
歳越の日などはいづれの家にてもことさらに雪を
掘て
窻のあかりをとり、ほりたる雪も
年越の事しげきにまぎれて
取除をはらず、
掘揚の
屋上にひとしき雪道
歩行にたよりあしき所もあり。
折要歩は、
密と
拔足するが
如く、
歩行に
故と
惱むを
云ふ、
雜と
癪持の
姿なり。
齲齒笑は
思はせぶりにて、
微笑む
時毎に
齲齒の
痛みに
弱々と
打顰む
色を
交へたるを
云ふ。
これこそ
幽霊ならめとしきりに念仏しければ、
移歩ともなくまへにすゝみきたり、
細微たる
声していふやう、わらはゝ
古志郡何村(村名はもらす)の
菊と申もの也