此間こなひだ)” の例文
母がみづから書く平仮名の、然も、二度三度繰返して推諒しなければ解らぬ手紙! 此間こなひだ返事をやつた時は、馬鹿に景気のい様な事を書いた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「こんな物をいつも飲むのではないよ。此間こなひだ独逸大使に詰まらない物を頼まれて訳して遣つたので、其礼に貰つたのだ。」
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
みつ此間こなひだ機械體操とかで右の足に怪我をしたのだけど、これつぱかりのことで休んでなるものかなんて、繃帶はうたいして跛足びつこ引き/\學校へ行つてゐるよ。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「え。つい此間こなひだまでお百度を踏むでゐたんですもの………少しお願があツたもんですから。」と首を縮めて莞爾する。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
此間こなひだ米国の大統領選挙があつた。その少し前ブライアン氏がミゾリイ州のある集会あつまりに招かれて出掛けた事があつた。
松本まつもとかつしやる? あゝ/\本道ほんだうぢや、なにね、此間こなひだ梅雨つゆみづてとてつもないかは出来できたでがすよ。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくし毎度まいどまゐりますがうも遠いのに恐入おそれいりましたよ、へい御内室ごしんぞさん此間こなひだは誠に有難ありがたぞんじます、エヘヽヽわたくしはねうもソノおさかな結構けつこうなのに御酒ごしゆいのとてえませう
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その前の晩、田住生たずみせいが訪ねて来た。一昨年をととしの暮になくなつた湯村ゆのむらの弟、六郎の親友である。今度福岡大学へ行く途中とあつて立寄つた。此間こなひだの洪水で鉄道が不通ゆゑ神戸までは汽船にすると云ふ。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
此間こなひだあなたにつぴどく怒られたゆめを見た。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ああ此間こなひだ通つた車の跡が
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
『あの人は一体ああいふ真似が好きなんですよ。それ、此間こなひだも感情教育がうだとかうだとか言つてゐたでせう?』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
始末は大抵たいてい極つてゐるさ。此間こなひだお前の親爺おやぢに會つた時にもあの家の内幕を一寸微見ほのめかしてゐたよ。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
此間こなひだも僕の方の専門の本を見てゐると、Zurechnungsfähigkeit の論の中に、あの男の説が引いてあつたつけ。なか/\細かい処を論じてゐるらしい。頭のい男だ。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おまけやつと此の川下へ出たら、何うだえ貴方あんた此間こなひだ洪水みづましに流れたと見えて橋が無いといふ騒ぎぢやないか。それからまた半里はんみちも斯うして上つて来た。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
見ると、一時も早く會ひたくなつて飛んで來たのよ。此間こなひだ私の家へいらしつたんだつてね。祖母さんは貴女あなたのことをめてゝよ。不斷から姉さんのことゝ云へば、祖母さんは褒めてるんだけど。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
役所廻りをして、此間こなひだやつた臨時種痘の成績調やら辞令やらを写して居ながらも、四六時中しよつちうそれが気になつて、「何の話だらう? 俺の事だ、屹度俺の事に違ひない。」
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此間こなひだ職員会議で、貴様が毎晩一人で外出するが、行先がどうも解らん。大に怪しいちふ話が出た。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そんなら可いけれど、此間こなひだも真佐アちやんの絵具を那麽あんなにして了うたぢやありませんか?
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
だもんだから、東京の方を方々聞合して、此間こなひだやうやう手紙を寄越したんです。僕が帰らなければ母も死ぬんです。これから帰つて、母を養はなければならないんです。学校はもうおめです。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)