此家こちら)” の例文
それから老女おばさん、いて後、此家こちらへ連れて来て戴いたのですがネ、あの土橋を渡つて烏森の方を振り返つて見た時には
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「しかし山焼の跡だと見えて、真黒はひどいな。俺もゆくゆくは此家こちらへ引取られようと思ったが、裏が建って、川が見えなくなったから分別を変えたよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だってなんぼ色がおしろいッてあんなに……わたくしうちにいる時分はこれでもヘタクタけたもんでしたがネ、此家こちらへ上ッてからお正月ばかりにして不断は施けないの
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
でも此家こちらへ来て間もなく、挨拶かたがた詫に行たら、どこぞへ行きなはるところやったが、物を祝っとくれやして、いろいろねんごろにしとくれやはったほどやから
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あるじの勤め先と、ちょうど近い所に店がございますので。それに、この佐渡屋の旦那様が、どのお弟子さんよりも、いちばん足繁く此家こちらへ通っておりましたから、自然顔を
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、土産の禮状を出したきり一日二日と愚圖々々してゐたが、すると、間もなく、親類つゞきの村上の主人が珍しく訪ねて來て、しや雪子が此家こちらへは來てゐないかと訊いた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
大芳棟梁の弟子達が寄ってしきりに勝五郎の噂をしているのを姐御のおしゅんがちらりときいて、鳶頭の勝さんなら此家こちらへも来る人、そゝっかしい人ではあるが正直な面白い男
此家こちらのお内儀かは存じませんが、それ、そこにいる御新造——とお藤を指して——が、私どもの店で、二十五両もする平珊瑚の細工物を万引ちょろまかしたから、今この場で、品物を返すか
近頃手に入し無比の珍品、名畫も此娘これの爲には者數ものかずならぬ秘藏、生附うまれつきとはいへおとなしすぎるとは學校に通ひし頃も、今ことの稽古にても、近所の娘が小言の引合は何時も此家こちらの御孃樣との噂聞に附
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
このお方は此家こちらの尼僧のおいになるので、先に申したようにごく話も温和な方で、口数も余り利かぬ方です。けれども忙しい中にも帰って来ると始終前大臣と尼僧と私と四人でいつも話が始まります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「それはそれは、何よりご看病が大変でしたね。で、甚だ何ですが、おなくなりになすったのは、此家こちらで。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今朝もお話下ださいましたけれどもネ、老女さん、私、うやら此家こちらが自分の生まれた所の様に思はれて、何時までも老女さんと一所に居たい様な気がして、まりませんの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「どうしたのです? 此家こちらへはこの頃ちつとも來ませんですが。」と、お梅の夫が答へた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
見兼て中に這入りましたがねえ、重々御立腹でもございましょうが、ういう料理屋で商売柄の処でごた/\すれば、此家こちらも迷惑なり、お互に一杯ずつも飲もうと思うに酒も旨うない
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしがそこまで来かかると、この人が横あいから飛び出して来て、へんなことを言ってわたしを掴まえそうにしますから、びっくり逃げ出して、つい此家こちらさまへ駈けこんだのでございます。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まさしの両親とも日本橋生れで、なくなった母親は山王様の氏子うじこ此家こちらは神田の明神様の氏子、どっちにしても御祭礼おまつりにははばのきく氏子だというと、魚河岸から両国のきわまでは山王様の氏子だったのが
思ふ存分我儘わがままを働いてらうかなどとも迷つたりネ、自暴やけになつて腹ばかり立つて、仕様しやうも模様も無かつたのですよ、スルと湖月の御座敷で始めて此家こちらの先生様にお目に掛りましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
殿様は御病気の届けを致して置いて、貴方の家督相続が済みましてから、殿様の死去のお届を致せば、貴方は此家こちらの御養子様、そうするとわたくし何時いつまでも貴方の側にへばり附いていて動きません
此家こちらに何だね、僕ンとこのを買ってもらった、錦絵にしきえがあったっけね。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(もしや此家こちらへ参りませなんだでございましょうか。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
徳「あゝうい此家こちらア裏ア何処だ……裏ア」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(もしや此家こちらまゐりませなんだでございませうか。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)