トップ
>
樹間
>
このま
ふりがな文庫
“
樹間
(
このま
)” の例文
樹間
(
このま
)
を洩れてくる折りからの晩春の薄曇りの陽を浴びて、その上にパラパラと木の葉を受けながら、白く侘しそうに石膚を光らせていた表面には
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
叔母は
此方
(
こなた
)
を見も返らで、琵琶の行方を
瞻
(
みまも
)
りつつ、椽側に立ちたるが、あわれ消残る
樹間
(
このま
)
の雪か、
緑翠
(
りょくすい
)
暗きあたり白き鸚鵡の見え隠れに、
蜩
(
ひぐらし
)
一声鳴きける時
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丁度暗い森の
樹間
(
このま
)
を通して
泄
(
も
)
れる光のように、聖者の像を描いた高い
彩硝子
(
いろガラス
)
の窓が
紺青
(
こんじょう
)
、紫、紅、緑の色にその石の柱のところから明るく
透
(
す
)
けて見えていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
既に東天は明け始めている——この島と五十
米突
(
メートル
)
の間隔で左手に突出した岬には、松が一面に茂っていて、その
樹間
(
このま
)
から
紅
(
あか
)
らみかかる東の空が絵のように見える。
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
石燈籠が、ずらりと両側に並んで、池の端から、下谷の花柳界の
賑
(
にぎわ
)
いの灯が、
樹間
(
このま
)
に美しく眺められた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
紅い鳥が、青い
樹間
(
このま
)
から不意に飛び出した。形は山鳩に似て、
翼
(
つばさ
)
も
口嘴
(
くちばし
)
もみな
深紅
(
しんく
)
である。案内者に問えば、それは俗に
唐辛
(
とうがらし
)
といい、鳴けば必ず雨がふるという。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
又
(
また
)
道中
(
どうちゅう
)
どこへ
参
(
まい
)
りましても
例
(
れい
)
の
甲高
(
かんだか
)
い
霊鳥
(
れいちよう
)
の
鳴声
(
なきごえ
)
が
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さゆう
)
の
樹間
(
このま
)
から
雨
(
あめ
)
の
降
(
ふ
)
るように
聴
(
きこ
)
えました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ジョウジ・バアナアド・ショウは、
樹間
(
このま
)
の白い小砂利道を踏んで私たちのまえまでくると、そこで立ちどまって、ポケットからはんけちを掴み出してちんと鼻をかんだ。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
鹿島の祠は寂寞として日影が
樹間
(
このま
)
から線を成して斜にさし込んでゐるのを見たばかりであつた。
船路
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
樹間
(
このま
)
をもる月影に照されたあさ子の、波打つ肉体の
顫律
(
せんりつ
)
を感じたとき、丹七は二十年の昔、河の中から引き上げられたあさ子の母の死骸に触れた時の感じを思い起してぎょっとした。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
最高楼から先刻通つて来た大
椰子林
(
やしりん
)
を越えて市街、港内、対岸の島を眼下に収め、左右両翼を
披
(
ひら
)
いた山の
樹間
(
このま
)
に洋人のホテルや住宅の
隠見
(
いんけん
)
するのを眺め
乍
(
なが
)
ら、卓を囲んで涼を
納
(
い
)
れた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
庭の
樹間
(
このま
)
をさまよひて
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
春に遇ひたる
樹間
(
このま
)
より
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
そのくせ、雨雲が切れて、
陽
(
ひ
)
の光が、さっと
樹間
(
このま
)
から
洩
(
も
)
れて、音が大分遠のいた頃から、
無暗
(
むやみ
)
やたらと、精神が爽やかになって、
年甲斐
(
としがい
)
もなく、ハシャギたくなる。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
やゝ
長
(
た
)
けた午前の日影が
樹間
(
このま
)
からさし込んで、それが草の葉の上にチラチラした。林を透して白い帆が二つ三つまで見えるので、そこに川が折れ曲つて流れてゐるのがそれとわかつた。
ひとつのパラソル
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
おぼつかなくも
籬
(
かき
)
に沿い、
樹間
(
このま
)
をくぐりて
辿
(
たど
)
りゆけばここにも墓標新らしき塚の前に、
一群
(
ひとむれ
)
の
男女
(
なんにょ
)
が花をささげて
回向
(
えこう
)
するを見つ、これも親を失える人か、あるいは妻を失えるか、子を失えるか
父の墓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
はるか
樹間
(
このま
)
の村屋に
炊煙
(
すいえん
)
の
棚曳
(
たなび
)
くあり。
紅
(
べに
)
がら色の出窓に名も知れざる花の土鉢をならべたる農家あり。丘あり橋あり小学校あり。製材所・変圧所・そして製材所。アンテナ・アンテナ・アンテナ。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
しめらへる
樹間
(
このま
)
や。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
“樹間”の意味
《名詞》
木と木が生えている(植えてある)間隔。
(出典:Wiktionary)
樹
常用漢字
小6
部首:⽊
16画
間
常用漢字
小2
部首:⾨
12画
“樹間”で始まる語句
樹間隠