樹々きゞ)” の例文
樹々きゞえだのこンのゆきも、ちら/\とゆびかげして、おほいなる紅日こうじつに、ゆきうすむらさきたもとく。なん憧憬あこがるゝひとぞ。うたをよみてえだ紅梅こうばいつぼみかんとするにあらず。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオ ひめよ、あのむす樹々きゞこずゑ尖々さき/″\をば白銀色しろがねいろいろどってゐるあのつき誓語ちかひけ……
樹々きゞに落葉のある如く、月日つきひにも落葉がある。無邊のあなたから吹いて來る音無おとなしの風は歳月の樹々を震はせて、黄ばみわなゝく月日をば順々に落してゆく。落ちてどこへ行くのだらう。
落葉 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
八月の日は既に高く上つて、樹々きゞの蔭を小さく濃く美しい芝草の上に印してゐた。卵色のペンキが眩しく光る向ひの建物の壁際かべぎはのカンナの列は、燃えるやうな紅と黄の花を勢よくに擡げてゐた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
樹々きゞの梢を染めよかし
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あかつきしもき、夕暮ゆふぐれきりけて、山姫やまひめ撞木しゆもくてて、もみぢのくれなゐさとひゞかす、樹々きゞにしきらせ、とれば、龍膽りんだう俯向うつむけにいた、半鐘はんしようあかゞねは、つきむらさきかげらす。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)