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朶
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だ
ふりがな文庫
“
朶
(
だ
)” の例文
あまり結構でない煙草の煙が、風のない庭にスーツと棚引くと、形ばかりの糸瓜の棚に、一
朶
(
だ
)
の雲がゆら/\とかゝる風情でした。
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
日輪は赫々と空にありながら、また
沛然
(
はいぜん
)
と雨が降りだした。怪しんで人々が天を仰ぐと、一
朶
(
だ
)
の黒雲のなかに、于吉の影が寝ているように見えた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
物
(
もの
)
に
魂
(
たましひ
)
があるとの
想像
(
さうざう
)
は
昔
(
むかし
)
からあるので、
大
(
だい
)
は
山岳
(
さんがく
)
河海
(
かかい
)
より、
小
(
せう
)
は一
本
(
ぽん
)
の
草
(
くさ
)
、一
朶
(
だ
)
の
花
(
はな
)
にも
皆
(
みな
)
魂
(
たましひ
)
ありと
想像
(
さう/″\
)
した。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
青い水に浮く一
朶
(
だ
)
の牡丹桜のような少年の死骸、わたしは、その美しさを目にまぼろしに
泛
(
うか
)
べてみた。
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
揚巻
(
あげまき
)
に結いし緑の髪には、一
朶
(
だ
)
の山桜を葉ながらにさしはさみたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
平次は何やら掴んでグイと引くと、一
朶
(
だ
)
の黒いものが手に殘つて、曲者はパツと飛びました。恐ろしい
輕捷
(
けいせふ
)
な身のこなし。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
道を行く者、軒さきに立って見送る者、みな天の一角に、
颱風
(
たいふう
)
を告げる一
朶
(
だ
)
の黒雲でも見出したように
囁
(
ささや
)
きあった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この曲には一点一画の無駄もなく、一
抹
(
まつ
)
一
朶
(
だ
)
の不足もない。達人ブラームスが技巧の粋を傾けて書いたと言ってもいい。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
杯
(
さかずき
)
を持ちながら、三人がひとしく空をふりあおぐと、こはなに?
狐火
(
きつねび
)
のような一
朶
(
だ
)
の
怪焔
(
かいえん
)
が、ボーッとうなりを立てつつ、頭の上へ落ちてくるではないか。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その人々はやがて、山頂の
三峰権現
(
みつみねごんげん
)
へ出て来た。そしてそこから空を仰ぐと、空には一
朶
(
だ
)
の雲もなかった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何やら怪しい者、——一
朶
(
だ
)
の黒雲のやうなものが、平次の寢屋に忍び込みました。鼾も何にも聞えませんが、手探りで床の側に這ひ寄ると、
盲目
(
めくら
)
搜りに蒲團を剥いで、闇にもキラリと閃めく刄。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれど、徐々に、片手に剣をさげた武蔵の姿が、
沛雨
(
はいう
)
をつつんだ一
朶
(
だ
)
の
黒雲
(
こくうん
)
のように、敵の
心
(
しん
)
へ、やがて降りかかるものを、恐怖させていたことは
慥
(
たし
)
かである。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十方
碧落
(
へきらく
)
、一
朶
(
だ
)
の雲もない秋だった。
黍
(
きび
)
のひょろ長い穂に、時折、驢も人の
背丈
(
せたけ
)
もつつまれる。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、彼の上半身は、ひょろと、空を泳いでいた。と見えたのも一瞬である。見物人の眼には、一
朶
(
だ
)
の血の霧が、バッと、大輪の花みたいにそこで開いたかのように映った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あれこれ、思い合せると、主人思いな右馬介の心には、鵺の住む一
朶
(
だ
)
の黒雲のなかに、主君の運命も、藤夜叉が生んだ不知哉丸の未来も、すべて、呪われているものに見えた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「まことに、晴天一
朶
(
だ
)
の雲です。けれど、彼の計を、さらに計るの策はありませぬか」
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、一
朶
(
だ
)
の白雲が、
瞼
(
まぶた
)
を流れた。——そしてそこに塩尻峠の山や、高野の草が見えた。——武蔵は
戦
(
そよ
)
ぐ風をふんで、剣を抜いて立っている。自分は、
杖
(
じょう
)
を取って、それに対している。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
朶
(
だ
)
の雲かと見えたのが、近づくに従って、一
颷
(
ぴょう
)
の軍馬と化し、敵か味方かと怪しみ見ているいとまもなく、その中から馳けあらわれた一人の大将は
漆艶
(
うるしつや
)
のように光る真っ黒な
駿馬
(
しゅんめ
)
にうちまたがり
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
麓
(
ふもと
)
から仰げば、山の中腹を、一
朶
(
だ
)
の白雲が通っているのであろう。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると、一
朶
(
だ
)
の黒雲が望楼を
繞
(
めぐ
)
って、望楼をスウと離れてゆく。——チカチカッと墨の中で何かが光った。光が眸を
拒
(
こば
)
むのである。だが痛みを
怺
(
こら
)
えて
凝視
(
ぎょうし
)
すると、それは一本の剣の剣光にちがいない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜の明けかけた野末の果てに、一
朶
(
だ
)
の白雲を見たのみである。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武蔵の体は、一
朶
(
だ
)
の雲みたいに、
濛々
(
もうもう
)
と汗にけむっていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仰ぐと、一
朶
(
だ
)
の春の雲がふんわりと遊んでいる。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朶
漢検1級
部首:⽊
6画
“朶”を含む語句
耳朶
一朶
粗朶
歯朶
万朶
千朶山房
麁朶
齒朶
海苔粗朶
粗朶垣
根粗朶
千朶
海苔疎朶
枝朶細工
麤朶
麁朶橋
歯朶子
海朶
祖朶
耳朶色
...