暴戻ぼうれい)” の例文
熱狂的なおそるべく憤激した自我が、さびしい誇大妄想のうちに伸び上って、暴戻ぼうれいな言葉をほとばしらせながら、世界を威嚇する。
絶対民主平等のわが国では輿論は唯だに万能オムニポーテントである許りでなく、遍在オムニプレゼントでもある。輿論の暴戻ぼうれいから逃るべき道もなく隠るべき場所もない。
少数と多数 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
いかなる権力の濫用らんようも、いかなる暴戻ぼうれいも、極悪な暴君のいかなる非道も、ブジリスやチベリウスやヘンリー八世のいかなる行為も
私はこの遺書の発見せられる時期が、彼清水が私に加えた暴戻ぼうれいに対する復讐に必要にして十分なる程度に、長からずかつ短からざるを祈る
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あたかも大洋上の暴風のように、狂いだつ栄光グロリアが展開するのを、諸君は見たのだ。強力暴戻ぼうれいなる意力の竜巻たつまきが過ぎるのを、諸君は見たのだ。
……そして、六波羅の暴戻ぼうれいにたいする怒りも、彼らの土足にいまや皇居までがおかされるに至ったかと思う痛涙も、それからのものであった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謙譲、忠誠、真実は地上から飛び去り、虚偽、暴戻ぼうれい、背信、そして飽くことを知らぬ黄金の欲望並びに最も粗野な罪悪の数々がとって代った。
店の紅殻色べんがらいろの壁に天狗の面が暴戻ぼうれいな赤鼻を街上に突き出したところは、たしかに気の弱い文学少年を圧迫するものであった。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
、そして、人が暴戻ぼうれいにたいしてたやすく起つものでないということを。——かれは、そこを根にして伸びあがるんだ。悪はそれ自身では、けっして成長しないものだ
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その美しい王女殿下を、どうです、MRミスタ・タチバナ、暴戻ぼうれいな英国の官吏は臆面もなく恥ずかしめようとしたのです。けだものとも何とも評しようのない無礼極まる奴らです。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と云いつつ突然ぐいと猿臂えんびを伸ばしてルパンの襟頸えりくびを掴んだ。何たる無礼の振舞だ!ルパンたるものいかにしてかくのごとき暴戻ぼうれいに忍び得よう。いわんや婦人の面前である。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
あなたは私の葛岡さんに対する暴戻ぼうれいを聞き、すっかり怒って、私に挑戦的になったようです。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
明治十七八年と云えば自由民権運動の盛んな時で、新思潮に刺戟しげきせられた全国の青年は、暴戻ぼうれいな政府の圧迫にも屈せず、民権の伸張に奔走していた。その時分のことであった。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お聞きの通りじゃ、鬼王丸め、市之丞殿を殺すとおどして、芳江姫を屈伏させ己が色慾をとげようとするのじゃ。何んと残忍暴戻ぼうれい人畜生にんちくしょうではござらぬかな。悠々としてはいられない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その当時の暴戻ぼうれいな制度や社会通念のために、人別を抜かれて非人の配下になったものが、世間からどんな屈辱的な待遇を受けていたか、恐らく今の人の想像も及ばないところでしょう。
島の伝説に、昔泉津の代官暴戻ぼうれいなりし故、村民これを殺し、利島に逃れしも上陸を許されず。神津島に上ったので、その代官の亡霊が襲い来るというのだが、どうも要領を得ぬとある。
銃後にある忠勇なる国民諸君も、十分沈着元気に協力一致せられて、防護に警備に、はたまたその業につくされ、もって暴戻ぼうれいなる外国S国軍の反撃に奮励していただきたい。昭和十×年七月二十五日。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
醜悪しゆうお獰猛どうもう暴戻ぼうれいのたえて異なるふしも無し。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
暴戻ぼうれい支那を徹底的に膺懲ようちょうすべしと言うのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
けれどもその試みは珍しいものであった。クリストフは、ワグナー派の芸術の強調的な暴戻ぼうれいさにたいする、革命的反動のその精神に、喜んで賛成した。
傲慢ごうまんと丁重と、憤激と愚昧ぐまいとその混合、真実の苦情と虚偽の感情とのその混淆こんこう暴戻ぼうれいの快感をむさぼる悪人らしいその破廉恥、醜い魂のその厚顔なる赤裸
天人ともに許さざる暴戻ぼうれいとは此事で御座るぞ——その兵部少輔殿の倖風情が、拙者の娘を申受け度いなどとはもっての外だ、とっとと帰らっしゃれ——何、そう言ったが不足だと仰しゃるか
木曽氏などとも兵を構えて甲斐武者の威を輝かせたが、永正十七年飯田河原で遠州の大兵を破って以来、すっかり天狗の鼻を高め、暴戻ぼうれいの振る舞いが多くなりむやみと家来を手討ちにした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この許昌きょしょうの都に親しく留まって以来、眼にふれ耳に聞えるものは、ことごとく曹操の暴戻ぼうれいなる武権の誇示こじでないものはありません。彼は決して、王道をまもる武臣の長者とはいえぬ者です。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は暴戻ぼうれいひじうたれる度に、何故かイベットの睫の煙る眼ざしを想出す。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その中の一羽がむやみに暴戻ぼうれいで他の一羽を虐待する。
あひると猿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼が意外にも憎悪の調子で述べたてる世の喧騒けんそう(彼はほとんどクリストフと同じくらい喧騒をにくんでいた)から遠く離れ、暴戻ぼうれいから遠ざかり、嘲笑ちょうしょうから遠ざかり
それを推測せんがためには、まず最も穏やかなるものと最も暴戻ぼうれいなるものとの対立を想像してみるがよい。彼の顔の上にさえ、確かに認め得らるるものは何もなかったであろう。
そこのところを察して僕の無理も僕の暴戻ぼうれいも許して、僕を救って貰い度い
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
暴戻ぼうれいな破壊者」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしそういう人はフランスにたくさんいた。そして多くの人は、ライン彼岸の新聞紙の反フランス的暴戻ぼうれいさが、日に日に盛んとなるのを見て、呆然ぼうぜんたるばかりだった。
私はそれと戦った。種々の暴戻ぼうれいがあった。私はそれを破壊した。種々の正義と主義とがあった。私はそれを布告し宣言した。領土は侵された。私はそれを防御した。フランスは脅かされた。
けれどもそういうものの起ったとき、無暗にこれ等の豊饒ほうじょうな果ものにかぶりつくのです。暴戻ぼうれいにかぶりつくのです。すると、いつの間にか慰められています。だから手元に果物は絶やさないのです
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そういう暴戻ぼうれいな警告が、ドイツの期待する結果と反対の結果を生じたのは、当然のことである。
勝利ある正義は、少しも暴戻ぼうれいたることを要しない。
しかし彼の傲慢ごうまん心はそれを拒んだ。こういう奴どもから逃げ出すふりをしたくなかった。——陰険暴戻ぼうれいな眼つきは彼にすえられた。彼は堅くなって、憤然とにらみ返した。
人類にたいする愛、諸国民や諸民族の親和にたいする敬虔けいけん翹望ぎょうぼう——それをこれらの青年らは何たる盲目な暴戻ぼうれいさをもって冒涜ぼうとくしてることだろう! われわれが征服したあの怪物を愛惜し
暴戻ぼうれいな征服者の掌中しょうちゅうにあることを、われわれは知っていた。