旅商人たびあきうど)” の例文
旅商人たびあきうどけば、蝙蝠傘かうもりがさ張替直はりかへなほしもとほる。洋裝やうさうしたぼつちやんのいて、麥藁帽むぎわらばう山腹さんぷくくさつてのぼると、しろ洋傘パラソル婦人ふじんつゞく。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま一人ひとり此処こゝるさうぢやが、お前様まへさま同国どうこくぢやの、若狭わかさもの塗物ぬりもの旅商人たびあきうど。いやをとこなぞはわかいが感心かんしん実体じつていをとこ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
狭い一室ひとまに、束髪たばねがみひっかけおびで、ふつくりしたい女が、糸車を廻して居たが、燭台につけた蝋燭ろうそく灯影ほかげに、横顔で、旅商人たびあきうど、私の其の縁続きの美男を見向みむいて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たゞ往交ゆきか人々ひと/″\は、みな名所繪めいしよゑ風情ふぜいがあつて、なかにはねぐら立迷たちまよ旅商人たびあきうどさまえた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わか世捨人よすてびとな、これ、坊さまも沢山たんとあるではないかいの、まだ/\、死んだ者に信女しんにょや、大姉だいし居士こじなぞいうて、名をつけるならいでござらうが、何で又、其の旅商人たびあきうど婦人おんな懸想けそうしたことを
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五六本樹立こだちのあるのを目当に、一軒家へ辿たどり着いて、台所口から、用を聞きながら、旅に難渋なんじゅうの次第を話して、一晩泊めてもらふとね、快く宿をしてくれて、うしてうして行暮れた旅商人たびあきうど如きを
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)