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旅商人
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たびあきうど
旅商人も
行けば、
蝙蝠傘張替直しも
通る。
洋裝した
坊ちやんの
手を
曳いて、
麥藁帽が
山腹の
草を
縫つて
上ると、
白い
洋傘の
婦人が
續く。
今に
最う
一人此処へ
来て
寝るさうぢやが、お
前様と
同国ぢやの、
若狭の
者で
塗物の
旅商人。いや
此の
男なぞは
若いが
感心に
実体な
好い
男。
狭い
一室に、
束髪の
引かけ
帯で、ふつくりした
美い女が、糸車を廻して居たが、燭台につけた
蝋燭の
灯影に、横顔で、
旅商人、私の其の縁続きの美男を
見向いて
但往交ふ
人々は、
皆名所繪の
風情があつて、
中には
塒に
立迷ふ
旅商人の
状も
見えた。
少い
世捨人な、これ、坊さまも
沢山あるではないかいの、まだ/\、死んだ者に
信女や、
大姉居士なぞいうて、名をつける
習でござらうが、何で又、其の
旅商人に
婦人が
懸想したことを
五六本
樹立のあるのを目当に、一軒家へ
辿り着いて、台所口から、用を聞きながら、旅に
難渋の次第を話して、一晩泊めて
貰ふとね、快く宿をしてくれて、
何うして
何うして行暮れた
旅商人如きを