斬罪ざんざい)” の例文
昔、地雷火じらいかやく斬罪ざんざいとなりし江戸末年の落語家朝寝房あさねぼうむらくも、かゝる雪の夜、席ハネてよりかゝる酒盃に親しみしならむか。
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
その晩長崎の町には、踏み絵の鋳造者萩原裕佐が「特別なおなさけをもって」ひそかに斬罪ざんざいに処せられるそうだといううわさがひろまった。
しかし、ある事件のため、時の王様の怒りに触れて、まさ斬罪ざんざいに処せられんとしたのです。その時、彼は何を思ってか、七日間の命乞いのちごいをいたしました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
敦賀つるが大分おおいた名東みょうとう北条ほうじょう、その他福岡ふくおか鳥取とっとり、島根諸県には新政をよろこばない土民が蜂起ほうきして、斬罪ざんざい、絞首
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
形こそ変れ、程度こそ異なれ、木を斬罪ざんざいにし、牛を絞刑こうけいにし、「子のあたまぶった柱」を打ちかえす類の原素は、文明の刑法にも存してしかるべきものである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
元文げんぶん三年十一月二十三日の事である。大阪おおさかで、船乗り業桂屋太郎兵衛かつらやたろべえというものを、木津川口きづがわぐちで三日間さらした上、斬罪ざんざいに処すると、高札こうさつに書いて立てられた。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
又「無いよ、どうせ人を害せば斬罪ざんざいだ、僕が証書を持ってゝ自訴じそすれば一等は減じられるが、君はのがれられんさ、よろしいやねえ、まアいから心配したもうな」
祖父祖母のやうなすぐれて美しい性質は夫婦とも露ばかりも持つて居らなかつたので、母方の伯父をぢといふ人は人殺をして斬罪ざんざいに処せられたといふ悪い歴史を持つて居るのであつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
異端を学び、幻術を蓄積し、厭魅咒咀して百物に害を及ぼす者は、首謀者は斬罪ざんざいに、連類者は流刑るけいに処すというのであるが、今日でう思想取締乃至は邪教処断を思わしめて興深い。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
獄門番の非人は上つ方の女性を犯したうえに首を与えし罪軽からずとなして極刑の斬罪ざんざい、旧罪をあばかれた小田切久之進の江戸払いは当然のことでしたが、ふたりの姉妹たちのうえには
ところが、運わるく、長篠ながしのの合戦のおりに、父の右兵衛うへえがとらわれたので、わたくしも、心ならず徳川家にくだっていましたが、ささいなあやまちから、父は斬罪ざんざいになってしまったのです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれは斬罪ざんざいになる者の号泣なきごえを聞いているからいやだ。のがれよう、逃れようという気が、首を斬られてからも、ヒョイと前へ出るのだ。しでえことをしたもんで、後から縄をひっぱっている。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「さあ、土匪どひ斬罪ざんざいか何か見物でも出来りゃ格別だが、………」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これでまた一人、斬罪ざんざいか。
大いに怒って直ちにその者を斬罪ざんざいに申付けたが、その後ち思案して、吉利支丹キリシタンの目明し右衛門作という油絵を上手に画く者に命じて、火を盗み「たばこ」を呑んで畳を焼いたところと
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
朝議ですでに斬罪ざんざいと決められた人だから、たとえ義朝がかばっても助かりはせぬ。いて弓矢にかけてもとなれば、朝議へ弓引く事になる。涙をのんでむしろ子の手で処置するしかなかったのだ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、佐幕派として知られた安井長十郎以下十一人のものを斬罪ざんざいに処した。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
業平文治が安永の頃小笠原島おがさわらじまへ漂流致します其の訳は、文治が人殺しのとが斬罪ざんざいになりまする処を、松平右京まつだいらうきょう様が御老中ごろうじゅうの時分、其の御家来藤原喜代之助ふじわらきよのすけと云う者を文治が助けました処から
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と——ある、ある! 俗称白縫しらぬいのおよし、窃盗きんちゃっ切りの罪重なるをもって四月三日死罪に処せられしうえ梟首獄門きょうしゅごくもん座頭ざとう松の市、朋輩ほうばいをあやめしかどにより四月四日斬罪ざんざいのうえ梟首獄門。
違背いはいあるにおいては、味方たりといえども斬罪ざんざい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)