教場けうぢやう)” の例文
じゆく山田やまだは、つて、教場けうぢやうにも二階にかいにもたれらず、物音ものおともしなかつた。枕頭まくらもとへ……ばたばたといふ跫音あしおと、ものの近寄ちかよ氣勢けはひがする。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とまた云ふ鏡子はお照の居ないうちなられて帰るものをと思ふのであつた。爺やに慰められても聞かず二人は母を廊下に上げて教場けうぢやうまでれて行つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かれはたゞ教場けうぢやうて、普通ふつう學生がくせいのするとほり、おほくのノートブツクをくろくした。けれどもうちかへつてて、それをなほしたり、れたりしたこと滅多めつたになかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今までは毎年まいねん長い夏休みのをはころへば学校の教場けうぢやうなんとなく恋しく授業の開始する日が心待こゝろまちに待たれるやうであつた。のうひ/\しい心持こゝろもちはもうまつたく消えてしまつた。つまらない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
塾生じゆくせい家族かぞくとがんで使つかつてゐるのは三室みま四室よまぎない。玄關げんくわんはひると十五六疊じふごろくでふ板敷いたじきそれ卓子テエブル椅子いすそなへて道場だうぢやうといつたかくの、英漢數學えいかんすうがく教場けうぢやうになつてる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さりながらはじめの内は十幾人じふいくたりの塾生ありて、教場けうぢやういたく賑ひしも、二人ふたり三人みたりと去りて、はて一人いちにんもあらずなりて、のちにはたゞひるうち通学生の来るのみにて、塾生はわれ一人いちにんなりき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)