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けうぢやう
今までは
毎年長い夏休みの
終る
頃と
云へば学校の
教場が
何となく恋しく授業の開始する日が
心待に待たれるやうであつた。
其のうひ/\しい
心持はもう
全く消えてしまつた。つまらない。
塾生と
家族とが
住んで
使つてゐるのは
三室か
四室に
過ぎない。
玄關を
入ると
十五六疊の
板敷、
其へ
卓子椅子を
備へて
道場といつた
格の、
英漢數學の
教場になつて
居る。
さりながらはじめの内は
十幾人の塾生ありて、
教場太く賑ひしも、
二人三人と去りて、
果は
一人もあらずなりて、
後にはたゞ
昼の
間通学生の来るのみにて、塾生は
我一人なりき。