揚屋あがりや)” の例文
と、みな同心部屋を出払って、ひろい役宅、吟味所、各詰所、揚屋あがりや、仮牢、不浄門の裏の空地など、おもいおもいさがし廻った。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かけたりけるかくて七すけとおうめは家主へあづ粂之進くめのしん揚屋あがりやいり喜八伊兵衞いへゑらうもどされけりさて翌日よくじつ大岡殿登城とじやうありて月番の御老中ごらうぢう松平右近將監殿まつだひらうこんしやうげんどの御逢おあひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
... 余は同志を募りて間部を要撃ようげきせんと欲したり」。奉行曰く、「大胆甚し、覚悟しろ、吟味中揚屋あがりや入りを申付ける」と。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一、東口揚屋あがりやに居る水戸の郷士堀江克之助、余いまだ一面なしといへども真に知己なり、真に益友なり。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
桟敷で身装みなりを変えて小屋抜けをするぐらいは造作もなく出来ることなのだから、これだけでは嫌疑が晴れようわけはなく、揚屋あがりやにそのまま留められたが、陳東海は
「でも、長崎殿には、ほかならぬ佐々木殿のおあつかいではと、さっそく法師を揚屋あがりやから出して渡してくれました」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水戸の臣鮎沢伊太夫、鷹司の臣小林民部権太輔両人遠島の命にて揚屋あがりや預け、小林は同居仕り候。色々妙話あり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
三千五百坪の地内に揚座敷あがりざしき揚屋あがりや大牢おおろう二間半にけんはん(無宿牢)、百姓牢、女牢、とむねをわける。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そへて此方へおくられ拙者迄せつしやまで落度おちどをさせ重々ぢう/\不調法ぶてうはふ斯樣かやう不埓ふらちにて御役がつとまるべきや不屆ふとゞ至極しごくなり揚屋あがりやいり申付るとりしかば同心とびかゝり粂之進くめのしん肩衣かたぎぬはねたちまちなは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「入牢です。入牢です」——釘勘の組のものは、揚屋あがりやの境でしきりと怒鳴っておりましたが、右往左往のとりこみかたで、暫くそこで身動きもなりません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝馬町の揚屋あがりやに入れて手酷てきびしく調べ詰めたが、どうしても自分が殺したとは言わない。
引立歸り其夜は假牢かりらうに入置其段そのだん越前守殿へ申立しかば越前守殿には右翌日に至り先達せんだつ揚屋あがりや入置いれおかれたる郷右衞門すけ十郎の兩人を出され御吟味中嘉川平助親類しんるゐ山内三右衞門へ御あづけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「じゃ、こいつを渡しておくから、弦之丞を召捕あげるまで、海部の揚屋あがりやへ預かっておいて貰おうか」といった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有為転変ういてんぺんの世の中。きのうまでは江戸一の捕物の名人。将軍の御前で捕物御前試合の勝名のりをうけたほどの身が、きょうは丸腰にされて揚屋あがりやの板敷の上。変ればかわる姿である。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
揚屋あがりやとよぶ板囲いの内に、ひと晩、ぶちこまれたばかりである。天皇ですらこれくらいな目にはわされている異常季節な世とおもえば、腹が立つこともない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……また西門慶せいもんけいの家族は、所内の揚屋あがりやへ拘置しておき、追っての、中央のご裁決を相待つように
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて揚屋あがりや入りとなった吟味中に、かれは四、五度破牢をくわだてましたが成功せず、遂に、あしたは小塚ッ原の露となるにきまった前の夜、嵐に乗じて牢舎ろうしゃ天井てんじょうを破り
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桐井角兵衛は罪人の揚屋あがりやを預かり、手代手先の下役を使って、阿波全土の十手を支配している役儀上、いやとはいえないで、すぐに人相書を十数枚複写させ、それを美馬みま海部かいふ板野いたの
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自身番の番太郎に手伝わせて、掏児すりの別府新七を、奉行所の揚屋あがりやへ差送った後、東儀与力は、もはや暗黒の迷宮から曙光をつかんだような気持で、さらに、次の電撃的な飛躍の手順を立てた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
就任以来、世評のとおり、この南町奉行所は、悪党狩りの方では、検挙の成績がわるく、数寄屋橋の揚屋あがりやや牢獄は、すこぶる閑散なものだったが、市政方面には、着々と、行政の効果をあげていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、揚屋あがりや入りに附されてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)