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掛稻
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かけいね
其の
以前から
勘次は
秋になれば
掛稻を
盜むとかいふ
蔭口を
利かれて
巡査の
手帖にも
載つて
居るのだといふやうなことがいはれて
居たのであつた。
山家、
村里は
薄紅の
蕎麥の
霧、
粟の
實の
茂れる
中に、
鶉が
鳴けば
山鳩の
谺する。
掛稻の
香暖かう、
蕪に
早き
初霜溶けて、
細流に
又咲く
杜若。
晝の
月を
渡る
雁は、また
戀衣の
縫目にこそ。
宛如、
秋の
掛稻に、
干菜、
大根を
掛けつらね、
眞赤な
蕃椒の
束を
交へた、
飄逸にして
錆のある
友禪を
一面ずらりと
張立てたやうでもあるし、しきりに
一小間々々に、
徳利にお
猪口、お
魚に
扇