手間賃てまちん)” の例文
一人前の職人は棺桶などを作ることを嫌ったが、腕のにぶい者や若い者は手間賃てまちんの高いのを喜んで、方々の早桶屋へ手伝いに行った。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勘次かんじ開墾かいこん手間賃てまちん比較的ひかくてき餘計よけいあたへられるかはりにはくぬぎは一つもはこばないはずであつた。彼等かれら伴侶なかまはさういふことをもつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まへにもいへるごとくちゞみは手間賃てまちんろんぜざるものゆゑ、がおりたるちゞみは初市に何程なにほどうりたり、よほど手があがりたりなどいはるゝをほまれとし
「もし、このおかねで、パンをって、このなかへいれてくださればしあわせです。そして、あなたの手間賃てまちんもおきください。」と、いてありました。
夏とおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、米は高くなったからといって、日常のものが、それにれて高くなるということはなく、やっぱり、百で六杯のそばは以前通り、職人の手間賃てまちんも元通りである。
「いや、そう思うだけのことで、やっていることは普通の工事なんだ。ただ行くときと、帰るときに、目隠しをされるというだけのことさ。手間賃てまちんは一日七円だ。普通の倍だぜ」
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なにか、自分じぶん天守てんしゆ主人あるじから、手間賃てまちん前借まへがりをしてつて、かりかへ羽目はめを、投遣なげやりに怠惰なまけり、格合かくかうをりから、わかいものをあふつて、身代みがはりにはたらかせやうかもはかられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
壁塗りの手間賃てまちんのことで、壁辰さんに話すのを忘れたことがあるのだ。ちょっと誰かに使いに行って、呼んで来てもらいたいと思うのだが、どいつもこいつもらいっていて、てんで家にいません。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)