手酌てじやく)” の例文
ボリ/\みつゝ、手酌てじやくで、臺附だいつき硝子杯コツプかたむけたが、何故なぜか、とこなか夜具やぐかぶつて、鹽煎餅しほせんべいをおたのにした幼兒をさなごとき思出おもひだす。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
加野は、コアントロウを手酌てじやくでやりながら、血走つた眼で、天井の動かない扇風機の白いプロペラを見上げてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
答無かりければ、満枝は手酌てじやくしてそのなかばを傾けしが、見る見る頬の麗くくれなゐになれるを、彼は手もておほひつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
蜀江しよくこうにしき呉漢ごかんあや足利絹あしかゞぎぬもものともしないで、「よそぢや、この時節じせつ一本いつぽんかんでもないからね、ビールさ。ひさしぶりでいゝ心持こゝろもちだ。」と熱燗あつかん手酌てじやくかたむけて
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
富岡は、むつくり起きて、冷えた徳利の酒を、手酌てじやくで盃についだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
と、うみいだあとを、ぶる/\ふるへるなみのやうなたゝみうへに、をとこだかをんなだか、二人ふたりばかり打上うちあげられたていで、くろつて突伏つゝぷした真中まんなかに、手酌てじやくでチビリ/\つて亭主ていしゆが、むつくりあたまげて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、手酌てじやくひつかけながら叔父をぢつた——ふる旅籠はたご可懷なつかしい。……
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)