つき)” の例文
どうかしてるぜ、つきものがしたようだ、怪我けがをしはしないか、と深切なのは、うしろを通して立ったまま見送ったそうである。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つきめ忌〻しい、と駄力ばかりは近江のお兼、顔は子供の福笑戯ふくわらひに眼を付け歪めた多福面おかめの如き房州出らしき下婢おさんの憤怒、拳を挙げて丁と打ち猿臂ゑんぴを伸ばして突き飛ばせば、十兵衞堪らず汚塵ほこりまみ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
このなかを、れてんだあを銀杏いてふ一枝ひとえだが、ざぶり/\とあめそゝいで、波状はじやうちうかたちは、流言りうげんおにつきものがしたやうに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一時ひとしきり世の中がラジウムばやりだった頃、つきものがしたようににぎわったのだそうですが、汽車に遠い山入りの辺鄙へんぴで、ことに和倉の有名なのがある国です。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眞晝間まつぴるまつきものがしたか、ばかされてでもるやうで、そのね、ふさんだをとこなんざ、少々せう/\氣味きみわるかつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そりゃ路之助に憑絡つきまとってる幽霊だ。いいえ、つきものは、当人の背中におぶさっているとは限らない——
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さあ、それからは、宛然さながら人魂ひとだまつきものがしたやうに、かつあかつて、くさなか彼方あつちへ、此方こつちへ、たゞ、伊達卷だてまきについたばかりのしどけないなまめかしい寢着ねまきをんな追𢌞おひまはす。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)