慨然がいぜん)” の例文
そこで、諸生徒は彼を鬼に仕立てて、意地の悪い張学正をおどしてやろうと思い立って、その相談を持ち込むと、彼は慨然がいぜんとして引き受けた。
成は慨然がいぜんとしてついて来た。そして寝室の前にいくと周は石を取って入口の扉を打った。内ではひどく狼狽ろうばいしだした。周はつづけざまに扉を打った。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「あれは一生の失敗だった」むしろ次郎吉は慨然がいぜんと、「厭がるお前を無理にすすめ、一幕うったほどでもねえ、たいした儲けもなかったんだからな」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そういい聞かされて、兵隊たちへ酒をわかつと、みな感激して、涙とともに飲み、士気は慨然がいぜんとふるい昂った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孝孺はつい聚宝門外しゅうほうもんがい磔殺たくさつせられぬ。孝孺慨然がいぜん、絶命のつくりて戮にく。時に年四十六、詞に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
既にして慨然がいぜんとして天下を以て自らにんじ、せつくつして書を讀み、遂に復古ふくこの大げふを成せり。
さも慨然がいぜんと腕を組んだ富五郎のまえに、おさよは始めて欲得よくとくのない母の純心を拾い戻した気がして、ながらく忘れていたいとおしい涙が、お艶に対してこみあげるのを覚えた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
少年はそぞろに往時を追懐すらむ、慨然がいぜんとしたりけるが
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
湯河原中佐は、慨然がいぜんとして、腕をこまねいた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さきは、慨然がいぜんとして
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
主人の中川も慨然がいぜんとして
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
これで、敗北つづきの悲調の底からも、慨然がいぜんとして、奮起の色が沸いた。その熱した頃を見て、宋江が言った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無慈悲の辻斬り! かかる人鬼の潜行いたしますのも、ひとえに忠相不徳のなすところ——と慨然がいぜんと燈下に腕をこまぬく越前守をのこして、陰を縫って忍び出た泰軒が、塀について角へかかった時!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と吐息して慨然がいぜんたり。看護員はうなじでて打傾き
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのとき、この紛論ふんろんに、あいそをつかして、慨然がいぜんと、席を突っ立った一将がある。本多平八郎忠勝ほんだへいはちろうただかつだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不幸ふかうそうはつく/″\このさまみまはし、慨然がいぜんとして
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
法師は決して悲鳴をあげなかった、そんなにされても、時折、慨然がいぜんと元気な声を張って、為政者いせいしゃの処置を罵り、そして手先になっている侍たちを、嘲殺ちょうさつするように笑ったりした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
慨然がいぜんと、篝火かがりかせて、夜寒をしのいでいたが、ふと、うしろを振り向くと、そこには何の屈託も知らない小姓組のうちでも、年少な小つぶばかりが焚火たきびに寄って、一月の寒さというのに
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、長大息すると、ありありと慚愧ざんきの色をあらわして、慨然がいぜんとこういった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の乱行を見て、慨然がいぜんと、時には不満をらす者もあった——潮田、武林、幸右衛門など、勿論、その派の者だったので、口もきかずに、苦り切って、ともの一と所に、顔を反向そむけ合っていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甘寧は、さッと、剣を抜き、起って、慨然がいぜんと、叱咤しったした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、慨然がいぜん、恩を謝して、しかもそれには従わなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
慨然がいぜんと、ひとりの部将が、部下に不平をもらしていた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陳宮は、彼の室を出ると慨然がいぜんと長大息して——
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔融こうゆうは、慨然がいぜんとして、府門を出ながら
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
慨然がいぜんと、山田八蔵は声をたかめた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ひとり慨然がいぜんとしていった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)