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愍
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あわれ
ふりがな文庫
“
愍
(
あわれ
)” の例文
己の憐れさを
愍
(
あわれ
)
む語である。邦訳聖書において見るもその悲哀美に富める
哀哭
(
あいこく
)
(Lamentation)たるを知り得るのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
また
全
(
まる
)
で馬、驢、駱駝を
烹
(
に
)
用いて、ギリシア人が、かほどの美饌を知らぬを
愍
(
あわれ
)
んだから、どの国で馬肉を食ったって構わぬはずだと。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ツンとした瑛子は、赤い燃え立つような絹のブラウスを着て
存分
(
ぞんぶん
)
に明けっ放しな顔に、老人の時代錯誤を
愍
(
あわれ
)
むような笑が浮びます。
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それにしても可哀そうな女です。
彼
(
あれ
)
自身も思い設けない結果になってしまって——。」と、芳村はまだ女の心持を
愍
(
あわれ
)
んでいた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうして、夫子がそれを咎めたまわぬのは、
痩
(
や
)
せ細るまで苦しんで考え込んだ子路の一本気を
愍
(
あわれ
)
まれたために過ぎないことを。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
わが国の
存亡
(
そんぼう
)
の決まる日がすぐそこに見えているために、これが最後のチャンスと
奮
(
ふる
)
い
起
(
た
)
って立ったのだ。どうぞ
愍
(
あわれ
)
みたまえ
地軸作戦:――金博士シリーズ・9――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いや、呉侯の肚ではありますまい。またしても
周瑜
(
しゅうゆ
)
の策です。
愍
(
あわれ
)
むべし、自分の策のために、周瑜の死にぎわはいよいよ近づいてきたようです」
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こういう時に、年老いたる男女の
往
(
ゆ
)
いて投ずべき家のないものは、
愍
(
あわれ
)
むべきである。山内氏から来た牧は二年
前
(
ぜん
)
に死んだが、跡にまだ
妙了尼
(
みょうりょうに
)
がいた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「もう/\そんなにお礼を言わなくてもいゝのだよ。あたしこそおまえさんに諦めを教えて貰ってるんだから——」と
愍
(
あわれ
)
みに堪えないように言いました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
不孝の子は、ただ慈父これを
愍
(
あわれ
)
み、不弟の弟は、ただ友兄これを
恕
(
ゆる
)
す。
定省
(
ていせい
)
怡々
(
いい
)
、
復
(
ま
)
た
膝下
(
しっか
)
の歓を
罄
(
つく
)
す
能
(
あた
)
わず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
倉皇として奔命し、迫害の中に、飢えと孤独を忍び、しかも真理のとげ難き嘆きと、共存同悲の
愍
(
あわれ
)
みの愛のために
哭
(
なげ
)
きつつ一生を生きるのである。「日蓮は涙流さぬ日はなし」と彼はいった。
学生と先哲:――予言僧日蓮――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
誠にハヤ未発達の
愍
(
あわれ
)
むべきものであるといってもよいのである。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
愍
(
あわれ
)
むがよい。只、それきりだ。観察が甘く、まるで童話的だ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
(
愍
(
あわれ
)
むごとくしみじみと顔を
視
(
み
)
る)が、気の毒です。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
王その高徳あって必ず位を奪わん事を恐れ宮中に召して殺さんとす、父これを
愍
(
あわれ
)
み子をその舅
波梨富羅国
(
はりふらこく
)
の
師
(
し
)
波婆利に送る
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
生母
桂昌院
(
けいしょういん
)
の勢力というものから、大奥の婦女政治が
醸
(
かも
)
され、妖僧の進言が用いられ「
畜類
(
ちくるい
)
お
愍
(
あわれ
)
み」などという、民を犬以下に見る法令が出て来たりした。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わたくしはいま直ぐにも土の上の
菰
(
こも
)
に臥して大地の慈しみに掻き抱かれ、流水の
愍
(
あわれ
)
みに慰められたい。それが娘の若い身空にしては早過ざると思うこころは一つも無くなっています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
銭形平次は八五郎の
鈍骨
(
どんこつ
)
を
愍
(
あわれ
)
むともなく、こう言うのでした。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
貧人犬の美食を羨みいささか配分をと望んだが、吠えらるるを
懼
(
おそ
)
れて躊躇する内、上帝彼を
愍
(
あわれ
)
み一犬に教えたからその犬皿より退き彼を招いた。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
上官に
媚
(
こ
)
びたり甘言につとめて、立身を計るのを見ると、(何たるさもしい男だろう)と、その心事を
愍
(
あわれ
)
み、また部下の甘言をうけて、人の
媚
(
こ
)
びを喜ぶ上官にはなおさら、
侮蔑
(
ぶべつ
)
を感じ
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諸賊射られた輩の矢を抜くと皆死んだので、かかる弓術の達者にとても叶わぬと
暁
(
さと
)
り、一同降参した。大将これを
愍
(
あわれ
)
み、そこに新城を築き諸人を集め住ませ曠野城と名づけた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その
無辜
(
むこ
)
を
愍
(
あわれ
)
みながらも、逃げるを追って刺し殺し去ったものにちがいない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風霜に苦しみ、食に乏しく、
痩
(
や
)
せ衰うるを
愍
(
あわれ
)
み、ある修行者短冊を書き、鳥の頸に付くるに、たちまち目開く、その歌は「には鳥のなくねを神の聞きながら心強くも日を見せぬかな」
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
喪主仰天して彼を捉え打っていわく、汝死人に遇わば
愍
(
あわれ
)
んで今後かかる事なかれと言うべきに多く祝するは何事ぞと。心得ましたと
詫
(
わ
)
びてまた行くと今度は嫁入りの行列に出逢った。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
若き男小蛇を
愍
(
あわれ
)
み種々押問答の末ようやく納得させ、自分の着たる綿衣に替えて小蛇を受け、この蛇は
何処
(
どこ
)
に在ったかと問いかの小池に持ち行き放ち、さて寺へ行こうと二町ほど過ぎると十二
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
愍
漢検1級
部首:⼼
13画
“愍”を含む語句
愍然
憐愍
御憐愍
不愍
可愍
慈愍
愍笑
御不愍
悲愍
愍情
皇愍
生類御憐愍
擁護愛愍
憐愍令
愍然想
愍殺
愍憐
愍念
御憐愍令
御憐愍々々
...