御婆おばあ)” の例文
「あの御婆おばあさんは御姉おあねえさんなんぞよりよっぽど落ち付いているのね。あれじゃ島田って人とうちで落ち合っても、そう喧嘩けんかもしないでしょう」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「しかしもし中っていなければ迷惑する人が大分だいぶ出て来るでしょう。あの御婆おばあさんはわたくしと関係のない人だから、どうでも構いませんけれども」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細君は何時もの通り書斎にすわっている彼の前に出て、「あの波多野はたのって御婆おばあさんがとうとうって来ましたよ」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
土間の上に下りていた御婆おばあさんが問題だったのです。御婆さんは二人いました。一人は立って、一人は椅子いすに腰をかけていました。ただし両方ともくりくり坊主です。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
叔父はじゃ御婆おばあさんだけ残して、若いものがそろって出かける事にしようと云った。すると叔母が、では御爺おじいさんはどっちになさるのとわざと叔父に聞いて、みんなを笑わした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし会ったら定めし御婆おばあさんになって、昔とはまるで違った顔をしていはしまいかと考える。そうしてその心もその顔同様にしわが寄って、からからに乾いていはしまいかとも考える。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それはこの本多ほんだ御婆おばあさんがをつとこゑであつた。門口かどぐちなどふと、丁寧ていねい時候じこう挨拶あいさつをして、ちと御話おはなしらつしやいとふが、つひつたこともなければ、むかふからもためしがない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
浅草から牛込へうつされた私は、生れたうちへ帰ったとは気がつかずに、自分の両親をもと通り祖父母とのみ思っていた。そうして相変らず彼らを御爺おじいさん、御婆おばあさんと呼んでごうも怪しまなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まへ御婆おばあさんがやつぐらゐになる孫娘まごむすめみゝところくちけてなにつてゐるのを、そばてゐた三十恰好がつかう商家しやうか御神おかみさんらしいのが、可愛かあいらしがつて、としいたりたづねたりするところながめてゐると
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「それじゃ私に似てだいぶ御婆おばあさんね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)