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うしろ
ふりがな文庫
“
後部
(
うしろ
)” の例文
私は、そうしている束髪の何とも言えない、
後部
(
うしろ
)
の、少し潰れたような黒々とした形を引入れられるように見入っていた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
昔を忘れないお婆さんも隠居らしい薄羽織を着て、まだ切下げたばかりの髪の
後部
(
うしろ
)
を気にしながら皆と一緒に膳に就いた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼の
誂
(
あつら
)
えた本棚には
硝子戸
(
ガラスど
)
も
後部
(
うしろ
)
も着いていなかった。
塵埃
(
ほこり
)
の積る位は懐中に余裕のない彼の意とする所ではなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は
拳骨
(
げんこつ
)
を固めて、耳の
後部
(
うしろ
)
の骨をコツンコツンとたたいた。けれどもそこからは何の記憶も浮び出て来なかった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は知らずに犯した売国奴の罪を償うため、自動車の
後部
(
うしろ
)
にとびつき、身を挺してここへきたのだ。壮太自慢の
拳骨
(
メリケン
)
がとぶたびに、ばったばったと船員共は倒された。
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
と
言
(
い
)
ふ
樣
(
やう
)
な
文句
(
もんく
)
で、
隨分
(
ずゐぶん
)
奇妙
(
きめう
)
な、
恐
(
おそ
)
らくは
新派
(
しんぱ
)
先生
(
せんせい
)
一派
(
いつぱ
)
から
税金
(
ぜいきん
)
を
徴收
(
とり
)
に
來
(
き
)
さうな
詩
(
し
)
ではあつたが、
月
(
つき
)
明
(
あきらか
)
に、
風
(
かぜ
)
清
(
きよ
)
き
滊船
(
きせん
)
の
甲板
(
かんぱん
)
にて、
大佐
(
たいさ
)
軍刀
(
ぐんたう
)
の
柄
(
つか
)
を
後部
(
うしろ
)
に
廻
(
まは
)
し、
其
(
その
)
朗々
(
らう/\
)
たる
音聲
(
おんせい
)
にて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「ここさ。こゝの骨さ、叛骨といふのは……」大森氏は扇の端で一寸
髑髏
(
しやれかうべ
)
の
後部
(
うしろ
)
を
突
(
つゝ
)
ついた。「むかし
蜀
(
しよく
)
の曹操が関羽の頭を見て、
此奴
(
こいつ
)
は叛骨が飛び出しているから
叛反
(
むほん
)
をすると言つた……」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
羽根がむらさきのような黒でお
腹
(
なか
)
が白で、のどの所に赤い
首巻
(
くびま
)
きをしておとう様のおめしになる
燕尾服
(
えんびふく
)
の
後部
(
うしろ
)
みたような、尾のある
雀
(
すずめ
)
よりよほど大きな鳥が目まぐるしいほど活発に飛び回っています。
燕と王子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
笑って正太と話していた三吉も、甥が別れて行った後で、急に軽い
眩暈
(
めまい
)
を覚えた。
頭脳
(
あたま
)
の
後部
(
うしろ
)
の方には、
圧
(
お
)
しつけられるような痛みが残っていた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そうしてすぐ自分の
後部
(
うしろ
)
にある
唐紙
(
からかみ
)
を開けた。彼は其所から多量の綿を引き
摺
(
ず
)
り出した。脱脂綿という名さえ知らなかった彼は、それをむやみに
千切
(
ちぎ
)
って、柔かい塊の上に載せた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は赤い牝牛が「
引割
(
ひきわり
)
」という方法に掛けられるのを見た。それは
鋸
(
のこぎり
)
で腰骨を切開いて、骨と骨の間に横木を入れ、
後部
(
うしろ
)
の脚に綱を繋いで逆さに滑車で
釣
(
つる
)
し上げるのだ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其所の腰掛の
後部
(
うしろ
)
は高い
屏風
(
びょうぶ
)
のように
切立
(
きった
)
っているので、普通の食堂の如く、広い
室
(
へや
)
を一目に見渡す事は出来なかったが、自分と一列に並んでいるものの顔だけは自由に眺められた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女でさえ
後
(
おく
)
れてはいない。腰の
後部
(
うしろ
)
でスカートを軽く
撮
(
つま
)
んで、
踵
(
かかと
)
の高い靴が
曲
(
まが
)
るかと思うくらい
烈
(
はげ
)
しく舗石を鳴らして急いで行く。よく見ると、どの顔もどの顔もせっぱつまっている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
時々私は技手と一緒に、凍った往来に足を留めて、
後部
(
うしろ
)
の方に起る
女連
(
おんなれん
)
の笑声を聞くこともあった。その高い楽しい笑声が、寒い冬の空気に響いた時は、一層雪国の祭の夜らしい思をさせた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
部
常用漢字
小3
部首:⾢
11画
“後部”で始まる語句
後部甲板
後部艦橋
後部車掌