彫刻ほり)” の例文
木で作った粗末な雉笛きじぶえか、土で作った人形ぐらいのもので、彫刻ほりのある立派な銀笛など、呉れそうにもないのでございます。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
金梨地きんなしじを見るような日光が、御縁、お窓のかたちなりに射しこんで、欄間らんま彫刻ほり金具かなぐあおい御紋ごもん、襖の引手に垂れ下がるむらさきの房、ゆら
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ドアの隙間から、だだっぴろい、ガランとした玄関のと、彫刻ほりのある物々ものものしい親柱おやばしらがついた大きな階段が見えます。
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
美しい彫刻ほりのある、銀の台付の杯を、二つ並べて、浪路は、黄金のフラスコ型のびんから、香りの高い酒をみたして
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
武蔵は、なるべく眼をうごかすまいとしても、つい、格天井ごうてんじょうや、橋架きょうかの欄干や、庭面にわもの様や、欄間らんま彫刻ほりなど、歩くたびに、眼を奪われてしまう気がする。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へりに金を入れた白い天井てんじょう、赤いモロッコ皮の椅子いすや長椅子、壁にかっているナポレオン一世の肖像画、彫刻ほりのある黒檀こくたんの大きな書棚、鏡のついた大理石の煖炉だんろ
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彫刻ほりしたふなおよぐもい。面白おもしろうないとははぬが、る、く、あるひなまのまゝにくくらはうとおもふものに、料理りやうりをすれば、すみる、はひる、きれなににせい、と了見れうけんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
銀とビードロとの瓔珞ようらくを垂らした、彫刻ほりのある巨大ないかり形の、シャンデリアが天井から下がっていて、十数本の蝋燭が、そこで焔を上げていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
部屋の隅の路易ルイ朝ふうの彫刻ほりのある大きな箱時計が六時を打つ。
プンとかおくすの匂い、仮面材は年を経た楠の木なのである。パラパラとこぼれる木の屑は彫刻ほり台の左右に雪のように散り、また蛾のように舞うのもある。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
本郷の通りへ差しかかった。忽ち小柄が飛んで来た。が、幸い駕籠へあたった。小柄には毒が塗ってあった。そうして柄には彫刻ほりがあった。銅銭会と彫られてあった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)