-
トップ
>
-
弥生
>
-
やよひ
弥生ヶ岡の一週、
駿河台の三週、牛門の六閲月、我が一身の
怱忙を極めたる如く、この古帽も
亦旦暮街塵に
馳駆して、我病める日の外には殆んど一日も休らふ事
能はざりき。
面八句を庵の柱に懸置き、
弥生も末の七日、明ぼのゝ空
朧々として、月は有明にて光をさまれるものから、
不二の峰かすかに見えて、上野
谷中の花の
梢またいつかはと心細し。
弥生の
頃は雪もやゝ
稀なれば、
春色の
空を見て
家毎に雪
囲を
取除るころなれば
桜花あかりさす
弥生こそわが部屋にそこはかとなく
淀む憂鬱
……
弥生も末の
七日明ほのゝ空
朧々として月は
在明にて光を
弥生はじめの
燕、
袖すり光る
あし
田鶴の
齢ながゝれとにや
千代となづけし
親心にぞ
見ゆらんものよ
栴檀の
二葉三ツ四ツより
行末さぞと
世の
人のほめものにせし
姿の
花は
雨さそふ
弥生の
山ほころび
初めしつぼみに
眺めそはりて
盛りはいつとまつの
葉ごしの
月いざよふといふも
可愛らしき十六
歳の
高島田にかくるやさしきなまこ
絞りくれなゐは
弥生の
頃は雪もやゝ
稀なれば、
春色の
空を見て
家毎に雪
囲を
取除るころなれば