帆船はんせん)” の例文
異様いような、帆船はんせん姿すがたが、ありありといたおもてえたかとおもうと、また、その姿すがたは、けむりのごとく、しだいにうすれてえてしまった。
びんの中の世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は無風帯を横ぎる帆船はんせんのように、動詞のテンスを見落したり関係代名詞を間違えたり、行きなやみ行き悩み進んで行った。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
百年ばかりまえに、リビア人の帆船はんせんからマルメーに上陸じょうりくした、あわれな移住いじゅうネズミの夫婦ふうふがその先祖せんぞになっているのです。
私たちのぎつけた船、スクーナー型、百七トンの的矢丸は、政府からたのまれて、遠洋漁業をやっている帆船はんせんである。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
年が年だからむろん給仕で乗り込んだのだが、船が補助機関を設備した帆船はんせんだったため、その身軽なところを見込まれて、二箇月とたたないうちに水夫に採用された。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
それは、富士男の父の所有する、スクーナーとしょうする帆船はんせんで、この団体は夏期休暇を利用して、近海航行についたのが暴風雨ぼうふううになやまされて、東へ東へと流されたのであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
わたしたちはボブの兄弟のあとについて、いくつかれ曲がったしずかな通りを通って、波止場はとばに着いた。かれはひと言も口をきくことなしに、一そうの小さい帆船はんせんを指さした。
とうとう、むだんで家をとびだし、小さな帆船はんせんに便乗して、南洋にわたったのでした。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
チャンウーは、油断なくあたりを見廻すと、壁にかかったスペインの帆船はんせんをかいた、油絵のがくをはずした。それから、壁のどこかを押すと、そこにパックリ小さいあながあいた。金庫なのだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
乗組は、ほとんど仲間の船に救助されたが、船のみは如何いかんともすることができず、完全にあの海の中に沈んでいる——それは二本マストの帆船はんせんではあるが、サヴァンナ式の補助機関がついていた。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
海洋の西洋木版画帆船はんせんき地球の円き弧線があはれ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
陸の近くにあるのは、たいていボートや帆船はんせんや小さな蒸汽船じょうきせんでしたが、海に向いているほうには軍艦ぐんかんが浮かんでいました。
また煙突えんとつからくろけむりげているのもあれば帆船はんせんもありまして、それはるだけでもうみうえはにぎやかでありました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
川口が、気がちがったようにつき出したうでにみちびかれて、沖に目をうつすと、はるか水平線のあなたに、とても小さいが、くっきりと、スクーナーがた帆船はんせんの帆が見えるではないか。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
重要書類を沢山の潜水艦に積んで、無人島にある秘密の根拠地に避難させたり、移動用の強力な無線電信局を擬装ぎそう帆船はんせんえつけたりしてさ、一旦は本土を喪うとも、やがて又いきおいをもりかえして
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
めずらしい型の帆船はんせんが横づけになっていました。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
家の外では、左官さかんやペンキ屋が、足場あしばをきずいて、家のまわりをっていますし、中では女中じょちゅうたちが、窓ガラスをきれいにふいています。みなとでは、帆船はんせん汽船きせんをさかんに修理しゅうりしています。
帆船はんせんだ。もう二三百年もの昔、いやそれ以前の船にちがいない。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あの帆船はんせんを調べるんだ」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)