)” の例文
旧字:
そりゃ同じ所に住んでるから、緋鯉にくが当前あたりまえだけれどもね、君が、よくお飯粒まんまつぶで、糸で釣上つりあげちゃ投げるだろう。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人死にて神魂たま亡骸なきがらと二つにわかりたる上にては、なきがら汚穢きたなきものの限りとなり、さては夜見よみの国の物にことわりなれば、その骸に触れたる火にけがれのできるなり。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
いてましたる子供こぞうが、五歳いつゝ六歳位むツつぐらゐ色白いろじろの、二重瞼ふたへまぶた可愛かあいらしい子でございまするが、生来はらからの乞食こじきでもありますまいが、世の中の開明かいめいれて、ぜん
斯様こんな若殿原に茶にされてたまるもんかい。第一、俺がいてゐる。俺が中々承知が出来ねエや。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
社会性と処世との配慮はややおくれてくるべきものであり、それが青春の夢を食い尽くすことは惜しむべきである。世にくことと天につくこととの間には聖書のしるすごとく越えがたい溝がある。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
其の年の秋までに謀策たくみ仕遂しおおせるのに一番むずかしいものは、浮舟うきふねという老女で年は五十四で、男優おとこまさりの尋常ひとゝおりならんものがいて居ります。此者これを手に入れんければなりません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
牡丹ぼたんはしけたやうに、花の中を廻りめぐつて、奥へ続いた高楼たかどのの廊下づたひに、黒女くろめこしもと前後あとさきに三人いて、浅緑あさみどりきぬに同じをした……おもては、雪のが沈む……しろがねくし照々てらてら
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)