やす)” の例文
新字:
「今晩は、今晩は。……もうおやすみだすか。」と、重吉が太政官の隱居の戸を叩いてゐるのが、ツイ一重隣りからのやうに聞えた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「この子は、直ぐやすませた方がいゝでせう! 疲れてるやうですから。くたびれて?」と彼女は、私の肩に手を置いて訊いた。
「私はお豊と一緒にやすみますから、何んにも知りませんよ。梯子はしごはたつた一つ、あの通り奉公人達の枕元を通らなきや、何處へも行けません。ホ」
ひそかに天皇のおやすみになつているのを伺つて、そばにあつた大刀を取つて、天皇のおくびをお斬り申してツブラオホミの家に逃げてはいりました。
恰度空いた室があつたから、其晩だけ政男さんは其方へおやすみになつたんですけど、朝になつたら面白いのよ。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「僕が持つてゐても無くなるんです。何か食べて今夜はもうやすんで下さい。」私は格子をあけた。
蒼白き巣窟 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
「おやすみだ。」と、例の淋しさうな聲で小さくさう言ひつゝ、つと出て行つた。早く下へ行つて診察室に歸らなければ、看護婦は一人しかゐないのにと冷吉は思つた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「向うの部屋には何にも見えはしませんよ。あなたは醉ってるんです、おやすみなさい!」
カピ長 なにさ/\、乃公おれ馳驅奔走かけずりまはるわさ、さすれば、大丈夫だいぢゃうぶ、どうにかなるわさ。そなたは、ヂュリエットのとこて、もの手傳てつだうてやりゃ。乃公おれ今夜こんややすむまい。はて、まかせておきゃ。
「どれ妾はもう寢よう。明朝はお前だちもゆつくりやすむがいゝよ。」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
をあけたまゝで、おたくぢやあみなさん、おやすみのやうでした。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ようくおやす
ところがその姉は大變醜かつたので恐れて返し送つて、妹の木の花の咲くや姫だけをめて一夜おやすみになりました。
『マア。ですけれど今夜は、宅が風邪の氣味でやすんでるもんですから、厭だつたけど一人行つて來ましたの。』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
やすんで居りましたが、——私が行くと眼を覺して、少し頭痛がするから、窓を明けてくれと申しました」
「おやすみのとこを御苦勞はんだした。」と、助役はペコ/\頭を下げて、汗も出ぬ額を頻りに拭いた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あちらの方には、立派な道具などがあるには違ひないのでございますが、ひどく陰氣いんきでガランとしてをりまして、私なぞとても一人でやすむ氣にはなれませんのでございますよ。
「だつたらなほやすんでゐた方が、からだが休まるぢやないか。」
(旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
あんさん、もう皆やすみませうつて。」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「あの、濟みませんが、お孃さんはやすんで居ります、え、お風邪かぜで御座います。どんな御用でせう?」
そこで天皇が御心配遊ばされておやすみになつている時に、御夢に神のおさとしをお得になりました。
『まあ早いことお前さん達は、まだ/\やすんでらつしやれば可いのに。』と笑顏を作つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かうしてやすんだ私は、少くとも暮れ初めた頃は寒くなかつた。
してもらひ、晝頃までには、何うやらうやら皆んな人心地がつきましたが、晝過になつて、つはりでやすんでゐた家内がブリ返し、一ときばかり苦しんで、たうとう——
今晩は何もしなくてもいから、先刻さつき教へたアノ洋燈ランプをつけて、四疊に行つておやすみ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
平次は母屋の奧の一と間、八疊のぜいを極めた部屋に、生れて初めての絹夜具に包まれてやすみました。
うかえ、でもマア悠乎ゆつくりやすんでればかつたのに、御苦勞でしたな。』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
娘がやすんだ部屋の隣に置いてあつた、何とか言ふ大名道具の香爐が無くなつたさうで——娘が歸つてから氣が付くと、追手でも掛けたやうに、番頭の甚助さんが飛んで來て
『遲くなりまして、新坊さんももうおやすみ?』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「人間が消えてなくなるわけはないよ、妹さんがやすむ前に脱出したんだらう」
「いえ、私がやすむ迄、姉は六疊でお仕事をして居りました」
「隣には私がやすんでおります」