“害:あや” の例文
“害:あや”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂56
佐々木味津三5
吉川英治3
三遊亭円朝1
国枝史郎1
“害:あや”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「平次、春日邦之助殿の潔白けつぱくはそれで相解つたが——本多右馬之丞殿をあやめた下手人は何者だ。それが解らぬうちは——」
尤も人をあやめたり、非道なことをするのはその手下、わけても飴屋に化けた甚助の惡業で、お歌はそれをどんなに嫌がつたことでせう。
五郎次郎は一寸苦い顏をしました。曲者が相當以上の名槍を投げ込んで、自分をあやめやうとしたとなると、これは容易ならぬことです。
まぎれもない、昨夜平次が枕元から盜られた短刀。曲者はこれで植惣をあやめた後、三つ葉葵を散らした鞘だけは持つて歸つたのでせう。
「いや聽かぬ、今晩、此處へ來てお琴お糸二人の姉妹に逢へば、伜金之助をあやめた下手人を教へてやるといふ手紙があつたから參つたのぢや」
「父親をあやめた下手人が、お前の口一つで捕まらないやうになるかも知れない。解るか、俺の言ふことが——」
「空つぽだつて、箱に仕掛けがあるかも解らないだらう。人まであやめて奪つた物を、さう易々と捨てるものか」
「空っぽだって、箱に仕掛けがあるかも解らないだろう、人まであやめて奪った物を、そう易々と捨てるものか」
「親分さん、私の父親をあやめた相手は誰でせう。それを教へて下されば、私は皆んな、申上げてしまひます」
「十次郎樣をあやめた下手人は、きつとあつしが搜し出すが、その前に小堀家の寶物——遠州流祕傳書と、東照公御墨附を渡して貰へないだらうか」
「よい/\、人をあやめたわけではないから、今度だけは知らぬ振りをしてやらう。その代り、こんな人騷がせは二度とはならぬぞ。宜いか、鑑哲」
「すると鼬小僧は誰だ、今度は人まであやめて居るぜ。この路地の中へ追ひ込まれてから、鑄掛屋の幸吉を殺して何處かへ潜り込んだに違げえねえ」
紛れもない、昨夜平次が枕元から盗られた短刀。曲者くせものはこれで植惣をあやめた後、三つ葉葵を散らした鞘だけは持って帰ったのでしょう。
「いえいえ違います、私はいかにも絵図面を手に入れました、が、一人も人をあやめた覚えはありません」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
だが、それはさておいて、今こそ、そもじに横蔵慈悲太郎をあやめた、下手人の名を告げましょうぞ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「菊次郎さんは人手にかゝつて、あやめられたものに違ひもございません。その下手人を親分の手で擧げて頂き、私は菊次郎樣の無念が晴らし度うございます」
「その上死骸には刀傷がございます。人にあやめられたとなると、捨置くわけには參りません」
「それから、伯父であろうと何んであろうと、人をあやめる気になるのも止さなきゃいけない」
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「武道をたしなむ者が道を誤まるとは何ごとじゃッ。無辜むこの人命あやめし罪は免れまいぞ! 主水之介天譴てんけんを加えてつかわすわッ。これ受けい!」
殿様のお命をあやめんためお菊殿共々お屋敷へ住み込み、機会を窺って居りました次第。
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そいつは分らない。が、あんなに多勢の人をあやめては、北條家は立ち行くまいよ」
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「身内の売り子の人別帳でござります。麻布であやめられたとか申しましたなつの身もとをお詮議せんぎにお越しであろうと存じますゆえ、お目にかけたのでござります」
右門捕物帖:30 闇男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「至極の手の内で御座るよ。一刀流の折紙で町人や下郎にあやめられる方ではない」
「でも、決して人をあやめなかつたのは、女らしくて宜い——とお前は言ふだらう」
「からかはないで下さいよ、親分。柳町の影法師は、たうとう人をあやめましたぜ」
「それは貴公の大手柄だった。——して、何の恨みでそんなに人命をあやめたのか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へエ、晝前に濟んで、主人の死體も始末いたしました。人間業らしくない泥棒が、本所中の大家を荒し廻るとは聞きましたが、まさか、人をあやめるとは思ひませんでした」
「黒旋風——なるほど、それに相違あるまい。御南の書き役に調べて頂けば、すぐわかる。——あの泥棒は、五六人の人をあやめて居るし、つた金も千兩を越すだらう」
眠り藥を呑まない手代の宗次郎をあやめて、三つの千兩箱を隱すだけのことなら
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「お霜さん、奧方をあやめた野郎は誰だえ。お前さんなら見當が付くと思ふが」
一と月ばかり前から、江戸中を荒し廻る恐ろしい強盗、時には女もさらえば、人もあやめる兇悪無慙きょうあくむざんなのが、——銭形平次らしい——という噂が立ったのです。
「菊治は自分で雙刄もろはの刀を胸へ突立てたんでなくて、どうかしたら、放つて置くとあと幾人あやめるか解らないので、お常がやつたんぢやありませんか。その證據には、——」
「ヘエ、昼前に済んで、主人の死体も始末いたしました。人間業らしくない泥棒が、本所中の大家たいけを荒し廻るとは聞きましたが、まさか、人をあやめるとは思いませんでした」
「それが親分、困つたことになつて了ひました。何分入られたのは六軒共大きい家ばかりで、盜られた金も少くない上、昨夜はたうとう人まであやめるやうなことになつたので御座います」
「權八と言つて、二十九になる男でございます。下總しもふさの古河の者で、十年前から奉公し、まことに實直に勤めて居りました。主人をあやめるやうな、そんな男ではございません」
私が若し人にあやめられて死ぬやうな事があつたら、二人のをひを調べて貰ひ度い、近いうちに私を殺す者があるに違ひないと思ふが、下手人はおひの專三郎でなければ彦太郎だ。
「錢形の親分、お仙は人などをあやめる女ぢやございません」
第二は毒蛇を潜ませて、古高新兵衛をあやめた下手人。
石井氏の名を知ってあやめようとする者などもあった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
番頭の佐太郎は、商賣上手な四十男で人などをあやめさうもない人間ですが、お吉が殺された時分丁度店に居なかつたのと、着物に血潮がベツトリ附いて居たので、疑ひを言ひ解く術もなかつたのです。
「自分の爲に人まであやめたからさ。娘心は不思議なものだ、投銛から紐を解いて、竿さをだけ窓から捨てゝ翌る日門松へ隱し、紐は藏の中へ入れたのさ、——それにしちや、逃出した吉三郎は薄情だ」
お孃樣をおびき出したのは裏に住む古金買の金兵衞と申すもので御座いますが、あやめたのは、湯島切通しに屋敷を構へる、三千五百石の大旗本、望月丹後と、その用人近藤幾馬と申すもので御座います。
「それが親分、困ったことになってしまいました。なにぶん入られたのは六軒とも大きい家ばかりで、られた金も少なくない上、昨夜はとうとう人まであやめるようなことになったのでございます」
敵討という言葉が、その頃どんなに刺戟的に響いたことか、人をあやめれば戦場で起った殺傷でない限り、必ず敵討に狙われ、一生危険にさらされ通しの自分の生命を感じなければならない時代だったのです。
「なにっ、おれにも腕を貸さないかと、見損みそこなうな。伝次は、畜生ではないぞ。めしいのお子や尼御前をあやめるような腕は持たぬ。儲け仕事とは何ンだ。山分けとは何ンだ。この外道げどうめが」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
番頭の佐太郎は、商売上手な四十男で人などをあやめそうもない人間ですが、お吉が殺された時分ちょうど店に居なかったのと、着物に血潮がベットリ付いていたので、疑いを言い解くすべもなかったのです。
太「何だって今此の狼藉者が這入ったのだ…さこれ面体めんていを見ろ、人違いを致すな、己は人をあやめた覚えも無し、敵と呼ばれて打たれる覚えも無い、これおもてを見ろ、心を静めて面を見ろ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お柳をあやめた疑いがかかったのだよ」
主人をあやめたといふ、薄刄のよく切れさうな刺身庖丁さしみばうちやうの外には、何んの變つたものもなく、窓も、天窓も、入口の建てつけも、嚴重の上にも嚴重を極めて、此處から曲者の侵入した樣子はありません。
「それは俺にも解るが、福三郎は腹から善人で、おまけに気が弱い。カッとなったら人を殺せないこともあるまいが、たくらんで人をあやめる柄じゃないし、それに五千両を隠すなんて器用なことの出来る男じゃねえ」
「お前さんは殺されたと言つても、運よく生き還つた。此上敵を討つ積りで、うつかり人などをあやめると、今度はお上の厄介になる——惡者が捕つても、そのお處刑しおきはおかみに任せることにしては何うだらう」
人をあやめて島流しにされたことのある人間ですから、どうせ物優しい男ではありませんが、三十を越して、滅切り物靜かになつた兄哥あにきが、こんなに腹を立てたのは、一緒に住んで居る新吉もあまり見たことがありません。
人をあやめて島流しにされたことのある人間ですから、どうせ物優しい男ではありませんが、三十を越して、めっきり物静かになった兄哥あにきが、こんなに腹を立てたのは、一緒に住んでいる新吉もあまり見たことがありません。
「金を盜つたとか人をあやめたのではないから、世間の噂には上がらないが、この世に二つとない寳だから、盜られた身になると金に代へられないほど惜しからう。書畫骨董の氣違ひばかりは、こちとらの考へたやうなものぢやないよ」
公使館を焼き払い、外人をあやめて、国難を招くがごとき浪藉ろうぜきを働くとは何ごとかっ。幕政に不満があらばこの安藤を斬れっ。この対馬をほふれっ。それにてもなお憤りが納まらずば将軍家をしいし奉ればよいのじゃ。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
仲間といふ者を持たぬ、たつた一人の仕業のやうですが、はりを渡り、ひさしを傳ひ、天窓を切破り、格子を外し、鼠かいたちのやうに忍び込んで、人をあやめ、財をかすめ、姿も形も見せずに煙の如く消えて了ふのです。
「待つた、待つてくれ平次殿。如何にも打ち明けよう。いや、翁屋小左衞門殿をあやめた下手人、間違ひもなく引渡さうが——牧野樣江戸御留守居の金山樣にお目にかゝり、この耳でもう一度、二十年前の果し合ひのことが確かめ度い——」
「いゝとも、この一らつは笹野樣も御奉行樣も御存じだ。東作はお上でも持て餘した惡黨、それをあやめたところで、大したおとがめはあるめえ——お富に初孫が出來るまでには、手前てめえも西國巡禮の旅から歸つて來られるだらうよ」
だがな、銭形の、釜吉は五十男だが、力もあり機転もききそうだ、狐の化けたような、偽物の寺小姓を使って、阿波屋一家へ一服盛りさえすれば、あとはわけも無い、眠り薬を呑まない手代の宗次郎をあやめて、三つの千両箱を隠すだけのことなら
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
なむあみだぶつ……。ああ、お師匠さんはえらかったな。一代、こんな世の中だったが人もあやめず自分も殺さず、けっこう毎日を楽しんで暮しなすった。修羅六道しゅらろくどうの地獄の世を、あの深い目で見物しに生れてきたようなお人だったが。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは奥方様、お戯れにも、ほどがあるというもの。なるほど、靴を脱いでしまえば、片足には音がないのですから、さような御推測も、無理とは思いませぬが、しかし、黄金郷エルドラドーの探検を、共にと誓った御両所を、なんであやめましょうぞ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「お糸と申すのは、新規しんきに參つた召使で、無理に引留めたのは惡かつたが、そのために、奧方樣まであやめられては、この儘には許し難い。どんな入費や手數を掛けても、曲者を召し捕つて、思ひ知らせてやるやうに、と、殿樣以ての外の御腹立ちで」
不思議な美しさを持った娘——おきゃんで柔順で、賢くて無知で、顔の道具の揃わないのが、反って一種の魅力になって居た矛盾だらけの江戸娘は、自分をあやめた者の名も言わずに、一刻一刻、いや一瞬一瞬、命を燃やし尽して、母親の後を追うのでした。
不思議な美しを持つた娘——おきやんで柔順で、賢こくて無智で、顏の道具の揃はないのが、かへつて一種の魅力になつてゐた矛盾だらけな江戸娘は、自分をあやめた者の名も言はずに、一刻々々、いや一瞬々々、命を燃やし盡して、母親の後を追ふのでした。
「早い話、辻斬は夏から始まつて、十二三人もあやめたらうが、不思議なことに荒し廻るのは、兩國から明神樣まで、外神田一圓と下谷淺草の端つこだけ、——寛永寺の寺内、湯島天神樣の境内、淺草寺本願寺寄りを避けて、大川と神田川の向うへは一度も乘り出さない」
「あの親父の房五郎は、四年前の明神樣の大喧嘩の時、二三ならず人をあやめて居る。女房子があるし、年も取つて居るから、可哀想だと思つて、若い俺が一人で罪を背負しよつてやつたんだ。俺があの時ベラ/\申上げて了へば、今頃は三宅島の土になつて居る野郎だ」
「まア、親分さん方、御苦勞樣ですこと、——お隣のお孃さんを殺した下手人は、もう擧がつたさうぢやございませんか。三河屋の若旦那ぢやありませんとも、あの優しい若旦那が、人などをあやめるものですか、下手人はお厩の喜三太ですよ、誰が何んと言つても、えゝ」
帰れ、お前はお梅とか言ったな——三文字紋弥が乱心して主君をあやめ、この高塚蔵人の手で成敗されたのだ、——だが、大公儀はそれでは通らぬ。いずれ御病死のとどけをすることになるだろう、——お前は此処ここから脱出ぬけだして、村々の自訴を止めるのだ。
いかさまのう。聞いただけでも眉間傷が疼々うずうずと致して参った。しかし、事は先ず女共を無事に救い出すが第一じゃ。いきなり身共が乗り込んで参らば面識ある者だけに、十郎次、罪のあばかれるのを恐れて女共をあやめるやも知れぬゆえ、それが何よりの気懸りじゃ。
「あの親父の房五郎は、四年前の明神様の大喧嘩の時、二三人ならず人をあやめている。女房子があるし、年も取っているから、可哀想だと思って、若い俺が一人で罪を背負しょってやったんだ。俺があの時ペラペラ申上げてしまえば、今頃は三宅島の土になっている野郎だ」
「旦那樣がに落ちないところがある、友吉は無類の忠義者で、嘘を言ふ筈はないが、馬は手馴れの青で、猫の子よりもおとなしい、——場所は鬼子母神裏の、百姓家の物置であつたといふが、どうも近くに人氣のないのを幸ひ、誰かが若樣をあやめたのではあるまいか——と」
「應う。言ふ迄もないことぢや。九天の上に照覽遊ばす、我が大祖神おほおやかみを呼び降し、揉みに揉んでいのるに於ては、人をあやめて淨財を奪つた曲者、蜘蛛くもの絲に掛つた青蟲のやうに、この祭壇の前に引寄せられ、肝腦かんなうを打ち碎いて天罰を受けるのぢや」
のうて何とするか! 隆光が献策致せし生類憐れみの令ゆえに命を奪られた者は数限りがないわ。京都叡山、天台の座首も御言いじゃ。護持院隆光こそは許し難き仏敵じゃ。彼を生かしておくは仏の教を誤る者じゃと仰せあったわ。さるゆえ竜造寺長門、これをあやめるに何の不思議があろうぞ。
御家人崩れの竹が居ましたよ。あの野郎は男も好いし、腕っ節も評判だし、人ぐらいはあやめ兼ねない人間ですが、お六がお新の死体を見付けた時は暖簾のれんを潜って入って来たばかりで、単衣ひとえをかなぐり捨てるように、ふんどし一つの裸になって女湯へ廻って来たそうですから
「佐吉親分は、投げわなを死骸の首に掛けさせて見るやうな、隨分イヤな事をさせた上、いきなり私を縛ると言ひ出すぢやありませんか。信州の山奧に居る時は、隨分投げ罠も使ひましたが、それはもう二十何年も昔のことで、江戸へ出て人間をあやめることなどは、夢にも考へちやゐません」
目から鼻へ抜けるような男で、店中の評判を聴くと、綺麗な下女のお鈴と気が合っていたらしく、お鈴が死んだ後は、すっかり憂鬱ゆううつになっていることも事実ですが、千次と一緒に店二階に寝ている友三郎が、夜中に脱け出して、主人の善八をあやめるということは考えられないことです。
五日前に若樣——と申しても、御腹樣のお銀の方御身持に信用いたしてよいものやら惡いものやら存じませんが、——兎に角、十次郎樣御不慮ごふりよのことがありまして、一夜のうちに御他界になつたのを駿河臺上屋敷の者の毒害と言ひ掛りをつけ、毒菓子の計略で若樣をあやめた下手人を出さないうちは
「疾風」というのは、その頃江戸中をふるえ上がらせた兇賊で、人もあやめず、戸障子も破らない代り、巧みに人の虚を衝いて、深夜の雨戸を開けさせて入り、抜刀で脅して有金を残らずさらって行く手際は、巧妙と言おうか、悪辣あくらつと言おうか、実に人も無気なげなるやり口だったのです。
馬吉には、上野の正午こゝのつが鳴つて、奧で笛の音がしたら、そつとお孃さんの部屋へ入つて、あやめるやうに教へて置いた。笛の音と一緒にやるのは、その時刻には、皆んな銘々の部屋に入つて、怖々こは/″\時の經つのを待つてゐるから、あの部屋のあたりには人目が無い上に、自分は何の關係も無いことを他の人に見せ付けて置くことが出來る。
親父が死んでしまった今となっては、親分さんに申上げても構わないでしょうが、何んでも私の父親は、故郷の出雲で、若気のあやまちで人をあやめ、江戸へ逃げて来て名前まで変え、同じ国から出た出雲屋に婿入し、十年ばかりのうちに、すっかり身上しんしょうふやして、江戸の鎌倉町で、押しも押されもせぬ暖簾のれんに仕あげたのだということでした。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お源を手に入れて、小橋屋を乘取るつもりだつたらう。お絹を追ひ出したのも、あの男の細工だらう。お絹は氣も心も良い女だが、お源はありや賢さうな馬鹿だよ、——庄兵衞は、主人をあやめる段取りを拵へると、伊三郎が金に困つてゐることを知つて、主人の金を融通するのだから、どんなことがあつても默つてゐろと約束して、五十兩の金を握らせ、それから、あれだけの芝居を打つたのだらう。