天真爛漫てんしんらんまん)” の例文
そうして、勇敢にして天真爛漫てんしんらんまん聖天大聖せいてんたいせい孫悟空そんごくうや、怠惰たいだな楽天家、天蓬元帥てんぽうげんすい猪悟能ちょごのうとともに、新しい遍歴へんれきの途に上ることとなった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「いや、踊りは自分も好きでござる。踊りは人間を天真爛漫てんしんらんまんにさせるもので、自分なども、時折は、やしきで独り踊りますがな」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし見識けんしきある彼の特長として、自分にはそれが天真爛漫てんしんらんまんの子供らしく見えたり、または玉のように玲瓏れいろうな詩人らしく見えたりした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おかみさんの肌抜ぎもとがめなければ、となりのお父さんのててら一つなのも当り前なのだ、真に天真爛漫てんしんらんまん、更けるほど話ははずむ。
勢い手工しゅこうの妙技をたくましうせる天真爛漫てんしんらんまんたるものにほかならざるに至るなり、故を以て衣食住の程度低き我が国において、我が国産たる絹布を用い
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
素朴そぼくに、天真爛漫てんしんらんまんに、おのおのの素質そしつに依つて、見たり、感じたり、考へたりしたことが書いてあれば、それでよろしい
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、わたくしとしては天狗てんぐさんの力量りきりょうおどろくよりも、しろそのくまで天真爛漫てんしんらんまん無邪気むじゃきさに感服かんぷくしてしまいました。
世にはとかく、天真爛漫てんしんらんまんなどと称し、世に行わるる作法さほうに反するをもってこころよしとするものがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この顔の中でいちばん強くアリョーシャの心を打ったのは、その子供らしく天真爛漫てんしんらんまんな表情であった。彼女は子供のような眼つきをして、何かしら子供のように喜んでいる様子であった。
子供のように天真爛漫てんしんらんまんな性格の持主であるロロー殿下を、捜索隊の人々がふみにじりはしないだろうかということであった。ロロー殿下には、三千夫にこの上もなく同情されたのであった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と新太郎君は至って天真爛漫てんしんらんまんだった。明日は秀子さんの家へ顔を出すのだ。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
天真爛漫てんしんらんまんともいい、「天にいつわりはなきものを」ともいうて、天には偽りはないものと、すでに相場が定まっているようであるが、その天の字をかむらせた天然界はいかにと見渡すと、ここには詐欺
自然界の虚偽 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
これらの歌多くは事に逢ふて率爾そつじに作りし者なるべく文字の排列はいれつなどには注意せざりしがために歌としては善きも悪きもあれどとにかく天真爛漫てんしんらんまんなる処に元義の人物性情は躍如やくじょとしてあらはれ居るを
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「いや、そうしからぬがよい、鞍馬くらまおくでそだった者じゃ、その天真爛漫てんしんらんまんがかえって美しい。したが、おまえはここへ、何用があってきたのか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ハッハヽヽヽ。天真爛漫てんしんらんまんだね。それで僕に譲ってくれるのか?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
日吉の天真爛漫てんしんらんまんに、弾正はひき込まれている姿だった。馴れやすい日吉はもうこの叔父さんを手玉に取って遊ばせていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祐助君ゆうすけくんは正三君のしっかりした態度に安心した。おやしきずれがして、おベッカ使いになりはしまいかと案じていたが、いろいろと話してみると、ごく天真爛漫てんしんらんまんにやっていることがわかったのである。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
天真爛漫てんしんらんまん、いまの君のおことばこそ、人間の善性というものです。君臣に道あり、兄弟に順あり、お兄君をしのいでお継ぎになるなど、もとより逆の甚だしいものです。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「子供は天真爛漫てんしんらんまんね」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いうところは天真爛漫てんしんらんまん、竹童はいよいよクロの別れをかなしみ、いよいよ声をだして泣くばかり——さすがの龍太郎も、これには弱りぬいて、ことばをつくしてなぐさめたうえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
傍若無人ぼうじゃくぶじんといおうか、天真爛漫てんしんらんまんといおうか、数正には、はかれないものだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中には、稚拙ちせつな文字と、天真爛漫てんしんらんまんな辞句で、自分の近況が書いてある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天真爛漫てんしんらんまんな願いに、忍剣もおもわず微笑ほほえんでそれをゆるした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このままの人ならば、天真爛漫てんしんらんまんといっていい。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)