-
トップ
>
-
大野
>
-
おほの
三冬を
蟄すれば、
天狗恐ろし。
北海の
荒磯、
金石、
大野の
濱、
轟々と
鳴りとゞろく
音、
夜毎襖に
響く。
「夏」の
帝の「
眞晝時」は、
大野が原に廣ごりて
大野のみなみ、菜の花の
黄金海透く
高嶺の、
大野の力こもりぬらし。
窟外からは、
角燈、
蝋燭なんど、
點火して、
和田、
大野、
水谷といふ
順序で
入來つた。
加賀の
大野、
根生の
濱を
歩行いた
時は、
川口の
洲の
至る
所、
蘆一むらさへあれば、
行々子の
聲が
渦を
立てた、
蜷の
居る
渚に
寄れば、さら/\と
袖ずれの、あしのもとに、
幾十羽ともない
「夏」の
帝の「
真昼時」は、
大野が原に広ごりて
大野の
話も
頷かれて、そのはたらきも
察しらるゝ。
眼路眇茫として
極無く、
樹蔭も見えぬ
大野らや
大野が上に空高く
靡びかひ浮ぶ
旗雲よ。