夢現ゆめうつゝ)” の例文
まるで汽車に揺られつゝ其重い響を何処かに聞きながら半ば睡つて居る時の様な気持で、夢現ゆめうつゝの間に不安な一夜を明かした。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
それが皆、夜風に靡く灯の光で、或は明るく或は暗く、殆ど夢現ゆめうつゝを分たない氣色で、何故かもの凄く見え渡つて居りました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もうが明けたのか、誠や聖人に夢なしとか、心の清らかなる人に夢のあるべき筈はない、我はよるとなく昼となく夢現ゆめうつゝに心を痛め、さながら五臓を
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分は何となく自ら進んで其の危難にちかづきたいやうな夢現ゆめうつゝの心持になつた。石筆せきひつや鉛筆なぞを口のはたまで持つて行つては、自分から驚いて泣き出した事があつた。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何事ぞ、眞の武士の唇頭くちびるぼすもいまはしき一女子の色に迷うて、可惜あたら月日つきひ夢現ゆめうつゝの境にすごさんとは。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
しかし、うもみません、だいこともありませんのに、奥州おうしう本松ほんまつふのは、昔話むかしばなしなにかでみゝについてたものですから、夢現ゆめうつゝ其処そことほつたやうにおもつたんです。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らぬことゝて取乱とりみだせし姿すがたられしか、られしに相違さうゐなしと、かほにわかにあつくなりて、夢現ゆめうつゝうつむけば、ほそきよしきをとここゑに、これは其方そなたさまのにや返上へんじやうせんお受取うけとりなされよと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夢現ゆめうつゝの境で、橇のすゞの音が聞えたやうに思つたが、それが実際に聞えたのだか、そんな夢を見たのだか分らなかつた。そのうち忽ち草庵の扉を叩く音がしたので、はつきり目が覚めた。
幾分位いくらねむつたからぬが夢現ゆめうつゝうちつぎのやうな談話はなし途斷とぎれ/\にみゝはひる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それが皆、夜風になびく灯の光で、或は明るく或は暗く、殆ど夢現ゆめうつゝを分たない気色で、何故かもの凄く見え渡つて居りました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勿論弟子はすぐに良秀に手をかけて、力のあらん限り搖り起しましたが、師匠は猶夢現ゆめうつゝに獨り語を云ひつゞけて、容易に眼のさめる氣色はございません。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勿論弟子はすぐに良秀に手をかけて、力のあらん限り揺り起しましたが、師匠は猶夢現ゆめうつゝひとごとを云ひつゞけて、容易に眼のさめる気色はございません。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
又獄卒は、夢現ゆめうつゝに何度となく、私の眼に映りました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
又獄卒は、夢現ゆめうつゝに何度となく、私の眼に映りました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)