坊主頭ぼうずあたま)” の例文
坊主頭ぼうずあたまの上には、見る見るくろずんだきたないしみが目立ってきた。醜怪しゅうかい触手しょくしゅのようなものが幾本となく坊主あたまをさすっている。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
坊主頭ぼうずあたまへ四つにたたんだ手拭てぬぐいせて、あさ陽差ひざしけながら、高々たかだかしりからげたいでたちの相手あいては、おな春信はるのぶ摺師すりしをしている八五ろうだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
明日ありと思う心の仇桜あだざくら、など馬鹿ばかな事をわめいて剃髪ていはつしてしまいまして、それからすぐそっと鏡をのぞいてみたら、私には坊主頭ぼうずあたまが少しも似合わず
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかもその穴の一つには、坊主頭ぼうずあたまの若い男が、カアキイ色の袋から首だけ出して、棒を立てたように入れてあった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なるほど、夜目にはハッキリと見えないが、泥をとかした真ッ赤な濁水が、まるで坊主頭ぼうずあたまがかさなるように、ムクムクわきあがってきて、穴は、もういっぱいの水。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
フロックを着た品格のある男であった。髪を普通の倍以上長くしている。それが電燈の光で、黒くうずをまいて見える。広田先生の坊主頭ぼうずあたまと比べるとだいぶ相違がある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吉兵衛きちべえというお百姓の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンと木魚もくぎょの音がしています。窓の障子しょうじにあかりがさしていて、大きな坊主頭ぼうずあたまがうつって動いていました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
青々と坊主頭ぼうずあたまになつたのである
春愁 (新字旧仮名) / 山口芳光(著)
誰もいないと思った階段の下から、ヌッと坊主頭ぼうずあたまが出た。しばらくすると、全身を現した。襟章えりしょう蝦茶えびちゃの、通信員である一等兵の服装だった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
入学試験はどうしたいといて見たら、「ええ、まあ。」と云いながら、坊主頭ぼうずあたまを撫でて、にやにやしている。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
暗い便所から出て、手水鉢ちょうずばちの水を手に受けながら、ふとひさしの外を見上げた時、始めて竹の事を思い出した。幹のいただきこまかな葉が集まって、まるで坊主頭ぼうずあたまのように見える。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五時ごろ、僕は散髪をすまして、洗面所で坊主頭ぼうずあたまを洗っていると、だれか、すっとそばへ寄って来て
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
どっちかと言うと一寸陰気な、そして何となく坊主頭ぼうずあたまに寒い風が当るともいったような感じのするところでした。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただその大きい目前もくぜんの影は疑う余地のない坊主頭ぼうずあたまだった。のみならずしばらく聞き澄ましていても、このわびしい堂守どうもりのほかに人のいるけはいは聞えなかった。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
玄関に待つ野明のあきさんは坊主頭ぼうずあたまである。台所から首を出した爺さんも坊主頭である。主人は哲学者である。居士は洪川和尚こうせんおしょう会下えかである。そうして家は森の中にある。うしろ竹藪たけやぶである。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わしに口を開かせるなんて、罪なことだと思うが」と川波大尉は、ちょっと丸苅まるがり坊主頭ぼうずあたまをクルリとでながら
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから椅子いす坊主頭ぼうずあたまたして、一寸ちよつと部屋のうちを見廻しながら
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
壁にうつっている僕の影法師! なんとそれは大人の影法師ではなく、坊主頭ぼうずあたまの子供の影法師だった。つまり僕は今大人の姿をしているが、壁にうつっている影法師は子供の姿をしているのだった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)