ところ)” の例文
すなはちその島より傳ひて、吉備きびの國に幸でましき。ここに黒日賣、その國の山縣やまがたところ一一におほましまさしめて、大御飯みけ獻りき。
五二壇場だんぢやうの御前なる三の松こそ此の物の落ちとどまりしところなりと聞く。すべて此の山の草木泉石せんせきれいならざるはあらずとなん。
彼らは工人その他の雑職人として、通例土地の班給にあずからなかったものらしく、「古事記」垂仁天皇条に、「ところ得ぬ玉作たまつくり」という諺の存在を伝えている。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
しかし、たとい文献となって遺っていないでも、神の名とかところの名とかいうような固有名詞が伝わってさえいれば、その解釈によって研究の端緒は開けるのである。
浦添考 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
日頃やさしく父につかへて孝養怠りなかりしが、月日のつは是非なきことにてその父やうやく老いにければ、国法にしたがはむには山にもせよ野にせよ里はなれたるところへ棄つべくなりぬ。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
おおとり」と「朝潮あさしお」とが取組み、一方が一歩を土俵のそとに踏み出せば、それで勝敗を決する規則であるが、世界中を土俵だとすれば、勝敗あるいはところを換えることもあるであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
宣長の「足引城あしひきき」説が平凡だが一番真に近いか。「あしは山のあし、引は長く引延ひきはへたるを云。とは凡て一構ひとかまへなるところを云て此は即ち山のたひらなる処をいふ」(古事記伝)というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
畝傍山うねびやま東南たつみのすみ橿原かしはらところを観れば、蓋し国の墺区もなかならむ、可治之みやこつくるべし
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ここに天皇悔い恨みたまひて、玉作りし人どもをにくまして、そのところをみなりたまひき。かれことわざに、ところ得ぬ玉作りといふなり。
と上人が下したまふ鶴の一声の御言葉に群雀のともがら鳴りをとゞめて、振り上げし拳をかくすにところなく、禅僧の問答に有りや有りやと云ひかけしまゝ一喝されて腰のくだけたる如き風情なるもあり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
大阪戸一五よりもあしなへめしひ遇はむ。ただ木戸一六掖戸わきどの吉き戸一七と卜へて、いでましし時に、到りますところごとに品遲部ほむぢべを定めたまひき。
と上人が下したまうつるの一声のお言葉に群雀のともがら鳴りをとどめて、振り上げしこぶしかくすにところなく、禅僧の問答にありやありやと云いかけしまま一喝されて腰のくだけたるごとき風情なるもあり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)