かへ)” の例文
山を下つて新市街を過ぐる時、アカシヤ並木の若葉が持つ柔かな鮮緑を車上より幾たびもかうべかへしつつ歎賞した。
「は?」彼は覚えず身をかへして、ちようと立てたる鉄鞭にり、こはこれ白日の夢か、空華くうげの形か、正体見んと為れど、酔眼のむなしく張るのみにて、ますまれざるはうたがひなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
絶頂新秋生夜涼ぜつちやうのしんしうやりやうをしやうず鶴翻松露滴衣裳つるはひるがへつてしようろいしやうにしたたる前峯月照一江水ぜんぽうつきはてるいつかうのみづ僧在翠微開竹房そうはすゐびにあつてちくばうをひらく。」題しをはつてのち行く事数十里、途上一江水いつかうすゐ半江水はんかうすゐかざるを覚り、ただちに題詩の処にかへれば
今朝、漁師急馳して海に出で、村媼そんあう囂々がう/\として漁獲を論ず。ひるを過ぐる頃、先づかへるの船は吉報をもたらし来る。之に次ぐものは鰹魚を積んで帰り、村中の老弱海浜にあつまる。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
狂妄きやうまうほとんど桓玄司馬倫のに類す、うべなるかなくびすかへさずしてちゆうに伏するや
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「何遊ばすツ」振りかへりたる梅子のかほは憤怒の色に燃えぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
と丁寧にお辞儀をして、別れ際にあとをふりかへつて
彼等は幕の開かぬ芝居に会へる想して、あまりに落着の蛇尾だび振はざるを悔みて、はや忙々いそがはしきびすかへすも多かりけれど、又見栄みばえあるこの場の模様に名残なごりを惜みつつ去りへぬもありけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
やうやく刀を捥放もぎはなせば、宮はたちまち身をかへして、けつころびつ座敷の外にのがれ出づるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)