-
トップ
>
-
單衣
>
-
ひとへもの
おつぎはそれから
村内へ
近所の
娘と
共に
通つた。おつぎは
與吉の
小さな
單衣を
仕上げた
時其の
風呂敷包を
抱へていそ/\と
歸つて
來た。
その
中でもとりわけ
立派な
總縫模樣の
晴着がちらと、
塀の
隙から、
貧乏な
隣家のうらに
干してある
洗晒しの、ところどころあてつぎ などもある
單衣をみて
なしけるに因つて
領分構ひとなり九郎兵衞は夫より駿河國
府中に知る人
在により
遙々と尋ね行き此處に三ヶ月程居たれども
兎角人請惡く
彌々落付難きに付
煮染たる樣な
單衣を
彼は
他人に
傭はれて
居ながら、
草刈にでも
出る
時は
手拭と
紺の
單衣と三
尺帶とを
風呂敷に
包んで
馬の
荷鞍に
括つた。
どうも
此の
喧嘩は
解らない。
晴着は
晴着でよいではないか。また、
單衣は
單衣でよいではないか。
晴着は
晴着。
單衣は
單衣。
晴着がいくら
立派でも
單衣の
役には
立たない。
單衣もそうだ。
お
品は十九の
春に
懷胎した。
自分でもそれは
暫く
知らずに
居た。
季節が
段々ぽかついて、
仕事には
單衣でなければならぬ
頃に
成つたので
女同士の
目は
隱しおほせないやうに
成つた。