喝采かつさい)” の例文
ほど無く私は幾らかの喝采かつさいの声に慢心を起した。そして何時いつしか私は、ひとりぼつちであらうとする誓約を忘れてしまつたのであらうか。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
さうだと分ると、喝采かつさいはなほはげしくなりました。舞台の上で子豚の鳴き声をまねるなんて、これまで話に聞いたことさへありません。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
此の仕掛花火しかけはなびは唯が製造したか知らぬが、蓋し興世玄明のやからだらう。理屈はもあれ景気の好い面白い花火があがれば群衆は喝采かつさいするものである。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
江戸つ子の拍手喝采かつさいを聞く毎に躍起やくきとなりましたが、『千里の虎』の超人的な腕と脚と、目と耳と、それにも優してよく働く智惠には、どうすることも出來ません。
芝居を見るものゝ喝采かつさいする要求点とか言ふものに芸術家の心は一致しないやうな処がある。
社会劇と印象派 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
主人 菊池氏は今度大向おほむかうからやんやと喝采かつさいされる為にはうそが必要だと云ふことを痛感したと云つてゐるだらう。あれは余り信用出来ないね。恐らくはちよつと感じた位だね。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若し長い脚の美女たちが、白い雷神の面をば丁度越後獅子のするやうに額のところに冠つて、巴里のムーランルージユあたりの舞台で一斉にレヴユーをやつたら喝采かつさいを博すだらう。
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
そこで一ぴきぶたなんとかつて喝采かつさいしましたが、たゞちに廷丁てい/\のために制止とめられました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
喝采かつさいくが如くにして階上左側の妨害を埋没まいぼつする刹那せつな、警視は起てり「弁士、中止」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
一日ついたちと十五日には職工の休み日なのでいつも満員であつたがその三階まで充満した見物の喝采かつさいが、背景の後ろにゐる彼の耳まで達する時、彼は思はず微笑ほゝゑんで四囲あたりを見廻すのが常であつた。
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
大衆は勿論喝采かつさいした。が、いよいよ負けたと判ると、なんだいといふ顔をした。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
喝采かつさいして、おもしろがつて、をかしがつて、散々さんざなぐさむで、そら菓子くわしをやるワ、蜜柑みかんげろ、もちをたべさすワツて、みんなでどつさりさる御馳走ごちさうをして、くらくなるとどや/\いつちまつたんだ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
われながら見事みごとおもはるゝばかり、暫時しばし喝采かつさいこゑまなかつた。
だれ喝采かつさいしてくれません。エミリアンはなほ子豚の耳をひつぱりました。子豚は鳴きました。がだれ喝采かつさいしてくれません。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
清浄無垢せいじやうむくなる少女の節操の揉躙じうりんせらるゝのをかへつ喝采かつさい歓喜する社会は果して成立の理由があるかと憤慨して、彼は実に泣きました、丸井さん、日本ではしきりに虚無党を悪口致しますが
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
と後で喝采かつさいした。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
大ぜいの見物人は、もう喝采かつさいすることも忘れて、酔つたやうになつてゐました。それからふと思ひ出したやうに、ばら/\と四方から金をはふり始めました。
シャボン玉 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
エミリアンがバイオリンをひきやめ、リスを籠に入れ、子豚をひきとめても、まだ笑ひ声や喝采かつさいはやみませんでした。子豚の鳴き声をまねた道化者も、降参してしまひました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
四方かららいのやうな拍手喝采かつさいが起りました。
シャボン玉 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)