ふい)” の例文
それは「どうも困ります」のくもった日で、桑畑をふいて来る湿った風は、宿の浴衣ゆかたの上にフランネルをかさねた私の肌に冷々ひやひやみる夕方であった。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
馬関の渡海小倉こくらから下ノ関に船で来る時は怖い事がありました。途中に出た所が少し荒く風がふいなみたって来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こんな無理な事はない。学校の方でも今までは四角なものを円くするというような法螺ほらふいていたものだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
すゝたき由一心込て相談に及びければ清右衞門倩々つく/″\きゝ心の内に一たん中山出雲守樣の御白洲しらすにて落着らくちやくに成し一件なれば假令たとへいさゝか證人の有ばとて容易よういに御取上にはなるまじふいきず
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
どんなに喜んで遠い近所にふいちょうして歩く事でしょう
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ト、ツンと済まして空嘯そらうそぶき、烟草たばこふいている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あるいは兵制は甲州流がいと云て法螺ほらの貝をふいて藩中で調練をしたこともある。ソレも私はただ目前もくぜんに見て居るばかりで、いとも悪いとも一寸ちいとも云たことがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
長崎のふうに、節分の晩に法螺ほらの貝をふいて何か経文きょうもんのような事を怒鳴どなってわる、東京でえば厄払やくはらい、その厄払をして市中の家のかどに立てば、ぜにれたり米を呉れたりすることがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)