取捨しゅしゃ)” の例文
浄瑠璃の作者もその取捨しゅしゃに苦しんだが、豊竹座ではお園六三郎と、かしくと、十右衛門と、その三つの事件を一つに組み合わせて
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
理詰りづめで判断はできるが、自分はだいたいの見地けんちよりこの問題を見る力なく、取捨しゅしゃ去就きょしゅうに迷うゆえ、いわゆる先輩の判断をうというならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「で——実は、諸所からも、家がらに過ぎた縁談なども持ちこまれ、親としても、取捨しゅしゃに迷うておるわけでござるが」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは現代の若き女性気質の描写びょうしゃであり、諷刺ふうしであり、概観がいかんであり、逆説である。長所もあれば短所もある。読む人その心して取捨しゅしゃよろしきに従いたまえ。
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
過般、榎本文部大臣が地方官に向って徳育の事を語り、大臣は儒教主義をとる者にして、いずれ近日儒教の要を取捨しゅしゃして、学生のために一書を編纂せしむべしとのことなり。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼女あれ諾否いなや肝腎かんじん吾等われら意志こゝろ添物そへものむすめうけひうへ吾等われら承諾しょうだくその取捨しゅしゃほかにはませぬ。
人民じんみんからはさまざまの祈願きがんるであろうが、その正邪せいじゃ善悪ぜんあくべつとして、土地とち守護神しゅごじんとなったうえは一おう丁寧ていねい祈願きがん全部ぜんぶいてやらねばならぬ。取捨しゅしゃ其上そのうえことである。
文明の趨勢と教化の均霑きんてんとよりきたる集合団体の努力を無視して、全部に与うべきはずの報酬を、いて個人の頭上ずじょうに落さんとするは、殆んど悪意ある取捨しゅしゃと一般の行為だからである。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前者の透明な堅実味、後者の豊かな情愛とは、好み好みによって取捨しゅしゃが定まるがどちらも良いものであるに相違なく、ただ吹込みの新しいコルトーの方に強味つよみのあることは疑いもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
もししからばそんなに原書の違ったものがあるのか知らん、あるいはまた訳された方々がその土地の人情等に応じて幾分いくぶん取捨しゅしゃを加えたような点もありその意味を違えたのもあるか知らん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「それは余り重きを置かないで適宜に取捨しゅしゃして呉れ給え。宜しく頼むぜ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それを取捨しゅしゃし、選択せんたくし、総合して行くのでなければならない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ともかくも三人送り込んで、係りの者に取捨しゅしゃさせたがいい」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
種々な思慮のひらめきの取捨しゅしゃによって、一日の生活が組立てられてゆき、生涯の人生が、織りなされてゆく。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、材料ざいりょう取捨しゅしゃ選択せんたくせめ当然とうぜんわたくし引受ひきうけなければなりませんが、しかし通信つうしん内容ないよう全然ぜんぜん原文げんぶんのままで、私意しいくわへて歪曲わいきょくせしめたような個所かしょはただの一箇所かしょもありません。
取捨しゅしゃは講演者の自由に任せたのである。