厳然げんぜん)” の例文
旧字:嚴然
いままでの話は、おとぎばなしや仮定であったかもしれんですが、ここに新しく、厳然げんぜんたる怪事実が存在することを発見しました。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
心音の動悸どうきまぬのに、またしても一羽、右手の駱駝らくだ岩の第一の起隆の上に、厳然げんぜんとしてとまっている。相対した上の鷹、おそらくはつがいであろう。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
さきごろの出水にくずされた広瀬ひろせ川のどてを越えて、昼もくらい杉並木の奥深くはいると、高い不規則な石段の上に、小規模の日光廟が厳然げんぜんとそびえている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と、厳然げんぜんとして宣告した。倉本もこれには辟易して、頭をかきかき退却しながら、十吉のデスクに寄つて
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
もちろん黄金があるのではないけれども実に奇々妙々な岩壁が厳然げんぜんとして虚空こくうつんざくごとくにそばだって居る。その岩壁の向うに玉のごとき雪峰が顔を出して居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今、あらゆる予備的な世評をいちどに思い出して、厳然げんぜんと、その存在と人物の重さに、襟を正さしめられたのは、まさに今夜その人と間近まぢかむかったときからであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、少年をなぐさめたいと思ったので、博士邸の跡を訪れた。あの厳然げんぜんたる高塀は、月光に照らされて、奇怪なる黒い影を長く引いていた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかも、金ヶ崎の城は、その夕べも、大きな夏の月の下に、厳然げんぜんと、不抜ふばつすがたを持っていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双眼鏡でもってたしかめたというとるですが、博士は別に痛そうな顔もせず、銅像のように厳然げんぜんと立っていたそうですぞ。本当に突撃隊ですかなあ
老先生は、厳然げんぜん
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その出所しゅっしょのいずくなるをしばらくとするも、とにかく『海底軍艦』などの科学小説がその頃現れ、読者の血を湧したことは厳然げんぜんたる事実であって
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「よろしい」リンドボーン大佐は、このとき長身を、すっくり伸して、直立し、厳然げんぜんと、命令を発した。「爆撃用意!」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
云うと、厳然げんぜんたる処分しょぶんするぞ。空中へ飛び出させていかぬものなら、縄でわえて置いたらばいいじゃないか。広告気球の代りになるかも知れないぞ
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そういうと、きっと誰方どなたでもこの余り意外な出来ごとのために、目を丸くなさることだろうと思うが、妾の懐姙かいにんは最早疑う余地のない厳然げんぜんたる事実なのである。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
島内には、久慈たちの姿はなく、その代りに、X大使が、厳然げんぜんと立って、こっちを見ているではないか。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして数秒後、その目まいが去ったとき、私は再び元の三角暗礁あんしょう内の一室に戻っていたが、目の前には例の怪しい姿をしたX大使が、厳然げんぜんと立っているではないか。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
命中したら必ず艦に穴が明くはず、穴が明けば必ずそこから海水が入って、たちまち轟沈ごうちん及至ないし撃沈げきちんとなるはず。ですから、あんなに厳然げんぜんとしているはずはありませんぞ
やや狭い坑道こうどうがあったが、その西へ続くものは、重々しい鉄扉てっぴがときどき開かれたが、その東へ通ずる坑道は何故なにゆえか、厳然げんぜんと閉鎖されたまま、その扉に近づくことは
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこには宝塚ホテルが厳然げんぜんそびえていた。彼の姿はそのホテルのなかに吸いこまれてしまった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「独想ではない、厳然げんぜんたる事実なのだ、いいか」と辻永は圧迫あっぱくするような口調で云った。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ッという間もなく、つづいて窓外に飛び出したのは、進少年に助けられた恩のある佐々記者であった。それを見るより、艇長は素早く窓のところに身を寄せ、厳然げんぜんと云い放った。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、きめつければ、岡部伍長は、涙にぬれた顔をあげ、厳然げんぜんと不動の姿勢をとって
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この蠅男の身体に関する秘密は、まだ十分了解することが出来なかったが、決死の青年探偵帆村荘六は脳底から沸き起ろうとする戦慄せんりつを抑えつけて、厳然げんぜんとこの大怪物と睨み合っている。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、エバン船長は、厳然げんぜんたるなかに、深いおもいやりのある言葉をかけた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
英国海軍の厳然げんぜんたる命令をあざ笑うにひとしい怪物のずうずうしい態度だ。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は厳然げんぜんたる威容を、とりもどして、即時全空軍に命令を発した。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
早く庭へ下りて用事を果すように厳然げんぜんと云いつけたのであった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)