厳格げんかく)” の例文
旧字:嚴格
ごろは、女中じょちゅうたいして、やさしい、いいおくさまでしたけれど、このばかりは、おそろしいおくさまにえました。そして、厳格げんかく言葉ことばつきで
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
持っているという語は、厳格げんかくにいうと人間を物に見立てたようで面白くないから、天からめぐまれたという方が正しい。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
何処やら武骨ぶこつな点もあって、真面目な時は頗る厳格げんかく沈欝ちんうつな、一寸おそろしい様な人であったが、子供の眼からも親切な、笑えば愛嬌の多い先生だった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ジャンセエニュ先生せんせいは高い椅子いす姿勢しせい真直まっすぐにして腰掛こしかけていらっしゃいます。厳格げんかくですけれど、やさしい先生せんせいです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
これはつうやの常套じょうとう手段である。彼女は何を尋ねても、素直すなおに教えたと云うことはない。必ず一度は厳格げんかくに「考えて御覧なさい」を繰り返すのである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みずから仙丹せんたんをかんでくちうつしにのませてくれるほどやさしい居士も、竹童が正気しょうきにかえるとともに、いつもの気むずかしい厳格げんかくなすがたにもどっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれほどまでにあいしているらしい母親がどうしてこのかわいそうな子どもにこれほど厳格げんかくになれるのであろう。アーサのおぼえられないのは病気のせいなのだ。
びわ湖を、厳格げんかくなおとうさんとすれば、霞ガ浦は、やさしいおかあさんのようだともいえるでしょう。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
生来せいらい貴方あなた怠惰者なまけもので、厳格げんかく人間にんげん、それゆえ貴方あなたんでも自分じぶん面倒めんどうでないよう、はたらかなくともむようとばかり心掛こころがけている、事業じぎょう代診だいしんや、そののやくざものにまか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この不作法ぶさほうきわまる訪問様式を、厳格げんかくあらためたいと思ったのではあるが、どうも習慣というのは恐ろしいもので、格子こうしにちょいと手がかかると、僕はいつの間にやらガラガラとやってしまって
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この主人しゅじんは、どちらかいえば、厳格げんかくすぎるひとでした。「うんとはたらかなくちゃ、いい人間にんげんになれない。」といって、辰吉たつきちに、いろいろなことをいいつけました。
木に上った子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると下から下士が一人、一飛びに階段を三段ずついなごのように登って来た。それが彼の顔を見ると、突然厳格げんかくに挙手の礼をした。するが早いか一躍ひとおどりに保吉の頭をおどり越えた。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みせ主人しゅじんは、たいそう厳格げんかくひとでした。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)