卓子台ちゃぶだい)” の例文
旧字:卓子臺
畑の次手ついでに、目の覚めるような真紅まっかたでの花と、かやつりそうと、豆粒ほどな青い桔梗ききょうとを摘んで帰って、硝子杯コップを借りて卓子台ちゃぶだいに活けた。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卓子台ちゃぶだいが出してある。賢一郎、役所から帰って和服に着替えたばかりと見え、くつろいで新聞を読んでいる。母のおたかが縫物をしている。午後七時に近く戸外はくらし、十月の初め。
父帰る (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お座敷のウ真中まんなかでもウ、お机、卓子台ちゃぶだいの上エでなりとウ、ただ、こいに遣って、すぅいすぅいとこすりますウばかりイイイ。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(抱くと怪我をしてよ。……夏虫さん——)(いや、どうも、弱った。)と襖の陰へ、晩に押して置いた卓子台ちゃぶだいの前へ、くったりと小さくなる。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
返事は下でおきまりの、それは小女か女中かで、銚子ちょうしさかずき、添えものは、襖が開いて、姪——間淵の娘の手で、もう卓子台ちゃぶだいに並んだのでありました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葛木は卓子台ちゃぶだいに乗せた寄鍋に着けようとしたはしを、(まだ。)とお孝に注意されて、そのまま控えながら話す。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは卓子台ちゃぶだいせるとかった。でなくば、もう少しなかいてすわれば仔細しさいなかった。もとから芸妓げいしゃだと離れたろう。さき遊女おいらんは、身を寄せるのにれた。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筆者わたしはその時、二人の酒席のつややかな卓子台ちゃぶだいの上に、水浅黄のつまを雪なす足袋に掛けて、片裾庭下駄を揚げた姿を見、且つ傘のしずくの杯洗にこぼるる音を聞いた。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
情人いいひとらしく扱われたような気がして? そんな負惜みをお言いなさんなよ。」軽く卓子台ちゃぶだいたなそこで当てて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その背の、奥八畳は、絵の具皿、筆おき、刷毛はけ毛氈もうせんたぐいでほとんど一杯。で、茶の間らしい、中の間の真中まんなかに、卓子台ちゃぶだいを据えて、いま、まだ焼海苔の皿ばかり。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卓子台ちゃぶだいの上に、一尺四五寸まわり白木の箱を、清らかな奉書包ほうしょづつみ水引みずひきを装って、一羽、紫の裏白蝶うらしろちょうを折った形の、珍らしい熨斗のしを添えたのが、塵も置かず、据えてある。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どころでない、宿へもどると、晩餉ばんげ卓子台ちゃぶだいもやい、一銚子の相伴しょうばん、二つ三つで、赤くなって、ああ紅木瓜になった、と頬辺をおさえながら、山鳥の旦那様はいい男か知ら。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こぶしを握って、ハタと卓子台ちゃぶだいについて、がっくり額を落したから、聞いている筆者わたしは驚いた。)
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卓子台ちゃぶだいの上は冬の花野で、欄間越らんまごしの小春日も、ほがらかに青く明るい。——客僧の墨染すみぞめよ。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
犬を料理そうな卓子台ちゃぶだいの陰ながら、膝に置かれた手は白し、じっられた瞳は濃し……
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卓子台ちゃぶだいの前へ、右のその三角帽子、外套のなりで着座して、左褄ひだりづま折捌おりさばいたの、部屋着をはだけたのだのが、さしむかいで、盃洗が出るとなっては、そのままいきなり、泳いでよろしい
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木地の古びたのが黒檀こくたんに見える、卓子台ちゃぶだいにさしむかって、小村さんは襟を合せた。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と葛木は、小皿と猪口の間を、卓子台ちゃぶだいの上でしきって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
男が真中まんなか卓子台ちゃぶだいに、ひじいて
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)