千年ちとせ)” の例文
彼血にまみれつゝかの悲しき林を出づれば、林はいたくあれすたれて今より千年ちとせにいたるまで再びもとのさまにかへらじ。 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこに千年ちとせの巖があるのです。巖に花も咲きます。つながりの工合だけで決定されてゆく人生というものは、謂わば果敢はかないものですね。
松の二葉よ千年ちとせるまで〽筆でかくとも絵にうつすとも更らにつきせじ松しまの波はうつらふ月の影しまの数シン知れぬ……。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
こゝに恨みある身の病を養へばとて、千年ちとせよはひ、もとより保つべくもあらず、やがて哀れは夢のたゞちに消えて知る人もなき枯骨ここつとなりはてなむず。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
越え 千年ちとせる 宮居が址に なづさへば ひのことごと よろづ代に らすごと 仄暗ほのくらの 高どのぬちに くすしくも 光りいませる 救世くせのみほとけ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
馬と残夢と月と茶の煙とを無理に一句にたたみ込み、三十日みそかやみ千年ちとせの杉とそれを吹く夜風とを合せて十七字の鋳形いがたにこぼるるほど入れて、かくして始めて面白しと思ひし者が
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
岩はななめに流れをいて、淙々そうそうとたぎる春の水に千年ちとせこけを洗わせていた。この大岩をもたげる事は、高天原たかまがはら第一の強力ごうりきと云われた手力雄命たぢからおのみことでさえ、たやすく出来ようとは思われなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かたともみづうみともえた……むし寂然せきぜんとしてしづんだいろは、おほいなる古沼ふるぬまか、千年ちとせ百年もゝとせものいはぬしづかなふちかとおもはれた圓山川まるやまがは川裾かはすそには——河童かつぱか、かはうそは?……などとかうものなら、はてね
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ありへけむもとの千年ちとせにふりもせで
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
千年ちとせ一度いちど現るるかの星こそは
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
千年ちとせの土となりにけり
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
千年ちとせつみこし白雪を
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
千年ちとせに亙らむや、しかも千年を永劫に較ぶればその間の短きこと一のまたゝきをいとおそくめぐる天に較ぶるより甚し 一〇六—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
げに寧楽ならびとがおもひに耐へて なれ千年ちとせぬるかな
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
汝かたく信ずべし、たとひこの焔の腹の中に千年ちとせの長き間立つとも汝は一すぢの髮をも失はじ 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いづくより 来ませし仏か 敷島の 大和の国に いほりして 千年ちとせへにける けふ日まで 微笑ゑみたまふなり 床しくも 立ちたまふなり ほのぼのと 見とれてあれば 長き日に 思ひ積みこし うれひさり 安けくなりぬ 草枕くさまくら 旅のおもひぞ ふるさとの わぎに告げむ 青によし 奈良の都ゆ 玉づさの 文しおくらむ 朝戸出の 旅の門出に 送りこし わがみどりも 花咲ける 乙女とならば 友禅の 振袖ふりそで着せて 率ゐ行かむぞ このみ仏に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)